インバウンドが追い風
共産圏にある中国は、政府のトップダウンの力の強さが世界屈指で、経済のハードランディングを避けるためのどのような政策も強行することが可能だ。
現在の市場反転の原動力は、減税、預金準備の追加引き下げ、インフラ投資拡大などに伴う資金流動性の活発化だが、彼らの取りうるオプションは真に無限大である。加えて、前述の米国の利上げ停止の方向性も、中国を始めとした新興国経済にとっては債務の金利負担の低下からポジティブだ。
そして、中国景気の底打ち反転期待が高まると、日本側にとって意識されるのは訪日中国人消費の再拡大だ。訪日中国人の消費額は2017年末を頂点として頭打ち傾向にあるが、この失速は明らかに米中貿易摩擦による中国人のセンチメントの低下だろう。
仮にこの懸念が解消され、景気に底打ち感が見え始めれば、再び消費が急増しても不思議はない。
無論、2016年4月以降の旅行者が購入品を持ち込む際の関税の引き上げや、2019年1月からは電商法の強化によって越境ECを含めた転売ビジネスの摘発に本腰を入れ始めたことでいわゆる「爆買い」が消え去る懸念も否定できない。
しかし、前回の関税引き上げ以降も訪日中国人の消費が下落に転じたわけではなく、ピークを付けたのはその後の2017年後半である。仮に悪影響が発生する場合であっても、直接的な「モノ」の販売にかかわる小売や量販店など業種は厳しいが、そもそも関税や転売の影響を受けない娯楽サービスといった「コト」の消費についてはほぼノーダメージといってもいいだろう。いわば、インバウンドによる「コト消費」の増加期待だ。