歓迎する人は少ないだろうが…
佐藤:もう一つ、今度は日本国民の側から。多くの国民は「なんだか、あまり同じ人が長期間首相をやるのはイヤだなあ」と思っているでしょう。それに議院内閣制は、こんなに長い間一人の人が続けて首相をやることを想定していません。
ただ一方で、首相が替わった場合もしかしたら大混乱が来るかもしれない、無免許運転みたいな人が総理大臣になって、どうしようもないことになるかもしれない──こういう不安感も持っていると思う。
その両方が合わさると、「この人なら、やってくれそうだ」と思えるような人が出てこないと、四選という方向を世論も容認するでしょうし、霞が関の官僚たちも安倍政権が続いてほしいと考えるようになるかもしれない。
だから、これは権力欲というよりも、霞が関官僚の政策欲がカギになると思います。小泉政権が崩壊した後、長期政権ができなかった。政策的にも、内政にエネルギーを全て取られてしまって、まともな政策が実現できなかった。
特に、これから教育改革が非常に重要になってきます。2020年度からの大学入試改革で文理の統合がありますし、大学の授業料が高騰してきていて、放っておくとアメリカのように年間ウン百万円になってしまう。高等教育無償化といった政策をやるにも、安定した政権基盤が必要になる。そうすると、ここで政権が替わってもらっては困るなあ──と、霞が関の人たちは考えていると思うんです。
砂山: ふむ。
佐藤: だから、四選はあり得るんじゃないかと思うんですよ。
砂山:いろいろほころびが出てきてもいますが……。
佐藤:それは間違いないです。 ですから、もろ手を挙げて支持するような人はたぶん、少ないでしょう。ただ、もっとマシなシナリオが考えられないんですね。
それから、政局を見るときには気を付けていただきたいのですが、「解散」「任期」「公定歩合」、その三つに関しては嘘をついても構わないというのが、政治の世界のルールだと私は考えているんです。
もちろん基本的に総理大臣は嘘をついてはいけないんだけれど、「いつ解散するか」と聞かれて「解散はありません」と言って、解散しちゃう。あるいは、公定歩合についても「変えません」と言って、上げたり下げたりすることがある。影響が大きすぎるので、事前には絶対に言わない。
そしてもう一つが、自分の任期です。この三つに関しては嘘をついてもいい。これは何も日本だけではなくて、世界的にある慣習という気がします。だから私は、政治家が言う「自分は選挙に出ない」とか「任期を全うする」とか「全力で追及する」といった言葉は、いつも話半分に聞いているんです。
鈴木宗男さんに、あるとき言われたの。「『自分は400%、総裁選に出ない』とか言っているのは、分母がどうなっているんだかわかったもんじゃない」と。
砂山:はははは。
佐藤:「では鈴木先生、本当に出ないときは何と言うんですか」と聞いたら、「それは『ゼロ』だ」。
砂山:なるほど。