2019.04.04

世界のサッカー界を激変させる中東「国家主導型選手養成機関」の実態

オイルマネーで変わる勢力図
栗田 シメイ プロフィール

結果も出てきた

その、カタールと犬猿の仲であるUAEも、対抗心を燃やしてサッカー選手の育成を国家ぐるみで進めている。

UAEの育成機関は「SSS」(スパニッシュ・サッカースクール)。カタールのアスパイアと同じく、国内の王族達から資金面でバックアップを受けている。現在、8歳から18歳までの選手たちが1800人ほど在籍しており、その強化予算は10億円を超える。

 

スクールの設立は13年。これは、カタールのアスパイアが本格的な強化に乗り出したタイミングとも重なっている。ちなみに両国は17年に国交を断絶。それは現在も継続中だ。現在、SSSでシニアデイレクターを務める、元レアル・マドリードコーチのイニアッキベニ氏が両国の「敵対関係」をこう説明する。

「アスパイアとSSSはお互いを意識し合っている存在。だが、決して交わることはないんだ。アスパイアがバルセロナのメソッドを導入すれば、SSSはレアル・マドリードのメソッドを取り入れ、両クラブ出身のコーチ陣もそれぞれに在籍している。

スペインでこの2チームは長年ライバル関係にあるけれど、カタールとUAEの王族達は、中東のフットボールの世界に“代理競争”を持ち込んだ、というわけだ。ただ、その成果は目に見える形で現れていて、この2つのアカデミーは、国際大会でもトップクラスの成績を残し始めているよ」

実際、近年のユース世代の国際大会では、アスパイアはイタリアのユベントスを破り、SSSはイングランドのチェルシーを退けるなどの結果を残している。16歳や17歳といった若年層の選手が、リーガ・エスパニョーラへの移籍を果たすケースも散見され始めている。イニアッキベニ氏が続ける。

「欧州や南米のクラブとの違いは明確だ。それは、一人の選手に対して、指導者が多くの時間を割くことができること。アカデミーにはレアル・マドリードの2倍以上の指導者がいるんだ。

施設自体もレアルの練習場であるバルデべバスを超える規模を持っている。指導者をたくさん抱えられる強みに加え、科学的なトレーニング、計算された食事に学習なども導入されている。プロを養成機関としてはこれ以上の環境はないと断言できるね」

規格外の資金力を持つ2カ国の“超投資”は、アジアカップの舞台でアジア各国に驚きを与えた。しかし、このインパクトはまだまだ序章段階。2022年にカタールで開催されるワールドカップでも、さらなる驚異として世界中のチームを脅かすことになるはずだ。

SSSの生徒たち photo by 栗田シメイ

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