2019.04.04

世界のサッカー界を激変させる中東「国家主導型選手養成機関」の実態

オイルマネーで変わる勢力図
栗田 シメイ プロフィール

カネと生活を保証

気になるのが、なぜスペインのトップクラスのコーチ達を、フットボールの後進国であるカタールに呼べたのか、ということだ。巨額のオイルマネーが動いたのかと思いきや、ブラス氏によれば、スペインの指導者達の平均月収は思いのほか少額だという。

バルセロナやレアル・マドリードといった一部の例外を除けば、生活に困窮するコーチ達がスペインには溢れており、特に地方クラブの指導者の中には副業を持つものも珍しくないという。地方クラブとはいえ、サッカー大国。指導者たちの能力は一流だ。

そういったコーチ陣の恵まれない境遇を知ったカタールは、彼らにとっては高額の(しかしカタールにとってはとてもリーズナブルな)オファーと豪華な住環境を提示し、カタールへの招聘を進めたという。

 

ブラス氏は続ける。

「スペイン国内だと、一部のコーチを除けば月収が2000ユーロ(約25万円)に満たないことが大半。でも、カタールからのオファーはその3~4倍にも当たるうえ、車や住宅や家族の生活まで面倒を見るというものだった。

魅力的なオファーであり、これまでの私達の生活を一変させるものだった。そりゃあ、首を縦に振るよね。もちろん、中東のナショナルチームをイチから強化するプロジェクトそのものが魅力溢れるものだったこともあるけどね」

数多の有望なコーチの招聘に成功したアカデミアは、次第に勢いづいていく。そして、中東ならではの独自の「進化」を遂げていく。

語学教育も同時に行う

アスパイアやSSSが従来のクラブチームと異なるのは、選手たちの大半が住み込みで生活も行うことだ。世界中のクラブチームのユースでは、基本的には育成年代は学校に通いながらクラブに所属するケースが多い。

だが、カタールとUAEのアカデミアでは学校に相当する施設も併用しており、母国の通信教育で単位を取得するプログラムも設けられている。

その中でも最も注力しているのが、語学教育だ。

サッカー選手として世界的な成功を収めるには、複数の言語を話せることが必須条件の一つでもある。この語学学校も兼ねた同施設に通う若者たちは、午前・午後の練習を行いながら、空いた時間には英語、スペイン語を中心とした学習を行う。

テストで点数が低い選手はアカデミアから除籍されるというから、その徹底ぶりは相当なものだ。語学を強化することで、彼らは10代のうちから、アカデミーと提携するスペインやベルギー、ポルトガルの下部リーグへ移籍し、将来の成功のための武者修行に励むことになる。

そして彼らが数年後再び母国へと戻ることで、母国のサッカーレベルがグンと底上げされるわけだ。

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