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世界のサッカー界を激変させる中東「国家主導型選手養成機関」の実態

オイルマネーで変わる勢力図

スターが指導者として続々中東入り

「カタールとUAEの2カ国は、近い将来アジアサッカー界の序列を覆すだろうね。彼らが育成に投資した潤沢なオイルマネーは、他の追随を許さない。最先端の技術と先人達の知識が詰めこまれている。数年後にはこのふたつの国がアジアのトップに君臨してもなんら不思議はないよ」

UAE(アラブ首長国連邦)のサッカー選手養成機関・SSS(スパニッシュ・サッカー・スクール)の代表を務めるミチェル・サルガド氏はこう断言する。

 

サッカー通なら、サルガド氏と聞けばピンとくるだろう。2000年代のレアル・マドリードの黄金期を支えた名選手は、現在FIFAの親善大使を務める傍ら、中東の地で1800人を超える若い選手の指導に当たっている。

いま、UAEとカタールの中東2か国が、潤沢な資金を背景に、ナショナルサッカーチームの強化を進めている。世界でも屈指のトレーニング施設を建造し、各国から優秀な指導者を呼び寄せ、数年という短い期間に急速な進化を遂げているのだ。

今年1月に行われたアジアカップの結果が、その進化を証明している。決勝戦でカタール代表と対戦した日本代表は1対3で敗北。そのスコア以上にカタールの強さが際立った試合として、日本のサッカーファンの心に「苦い思い出」として刻まれている。

実は、アジアカップ優勝時のカタールのメンバーのうち、なんと13人が「アスパイア・アカデミー」というカタールの育成組織出身の選手たちで占められていた。この事実はサッカー界に大きな衝撃を与え、いま、世界のサッカー関係者の注目が中東に集まっている。

サルガド氏もナショナルチーム強化のためにUAEに招かれた指導者のひとり。UAEとカタールの「本気度」について、こう解説してくれた。

「カタールはバルセロナ、UAEはレアル・マドリードと世界のトップクラブの有能な指導者たちを次々と引き抜いているんだ。2015年以降、シャビやエトーら元バルセロナ出身の選手がカタールリーグに移籍したことで、スペインでカタールという国の認知が一気に広まった。

彼らが広告塔となり、バルセロナとの関係性を強めたんだ。シャビは自身が関係するバルセロナのスタッフ達に声をかけたことで、カタールとのバルセロナとの関係は年々強固なものとなっている。

一方で、UAEは私やロベルト・カルロス、フィーゴやトレゼゲ、ジェラードといった引退したスター選手をユース世代の育成のために指導者として招聘し、レアル・マドリードの育成メソッドを取り入れている。

施設、指導者陣、教育、欧州との提携。全ての面で、いま、SSSは世界最高の環境だ。正直、これで強くならない理由を探すほうが難しいよ」