イチローが引退会見で語った「人望がない」の真意を読み解く

天才の心象風景を読む
週刊現代 プロフィール

チームで浮いた存在に

そして、もうひとつ、イチローの自らの「人望」に対する心象に大きな影響を与えたのが、'01年、27歳で加入したマリナーズでのチームメイトとの関係だった。

当時、取材を担当していたスポーツ紙記者は「あの頃のイチローは、若さゆえにあまりに尖りすぎていた」と語る。

 

「あの時期、イチローの日本メディアへの対応は本当に残念なものでした。たとえば、シャワー後にロッカールームで取材しようと待っていると、タオルを1枚巻いただけの姿で現れ、背を向けたまま『はい、どうぞ』と質問させる。

扇子でパタパタとしながら適当に受け答えし、気に入らない質問には、『次、どうぞ』と無視を決め込む。異様な光景でした。

もちろん、イチローには、『自分はグラウンドに命を懸けているのだから、メディアの人たちにもそのくらい覚悟してほしい』という気持ちがあったのでしょう。

それにしても、取材できなくなることを恐れた周囲が傲慢さを無批判に受け入れたことで、目に余る状況になってしまった」

そうした態度もあり、イチローはいつしかチームメイトのなかでも浮いた存在になってしまった。

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「イチロー在籍中のマリナーズはなかなか勝てない暗黒時代で、チームの現状に対して公然と不満を口にするイチローに、周囲の選手はついてこられなかった。

くわえて、普通の1番打者は後続に球種を見せるために相手投手に球数を投げさせたり、四球での出塁を目指したりするものですが、イチローは自分がヒットで出塁することを最優先にしていた。

それに対して『チームプレーの意識がない』と批判の声もありました。

たとえば'09年、イチローが胃潰瘍で開幕から8試合を欠場している間に勝ちが続くと、『今年はムードがいいからね』と、暗にイチローがいないから勝てていると言わんばかりのコメントをする選手さえいたのです」(前出・スポーツ紙記者)