進化の「ミッシング・リンク」はなぜ見つからないのか

ヒトとサルの間にあるもの
更科 功 プロフィール

ミッシング・リンクは見つからない

現在の四肢動物は2万種以上いるが、それらはすべて、ただ1種の肉鰭類から進化したと考えられる。デボン紀に肉鰭類が何種いたかはわからないが、化石として発見されたものが、ほんの一部にすぎないことは確かである。

現生の魚類は3万種以上発見されており、しかもこれからも新しい種が発見されるだろう。仮に、現在の生物多様性とデボン紀の生物多様性が似たようなものだったとすれば、デボン紀に繁栄していた肉鰭類が数千種ぐらいいてもおかしくない。その中のたった1種からすべての四肢動物は進化したのである。そのたった1種の化石が見つかる確率は非常に低い。まあ、宝くじに当たるようなものだろう。

したがって、たとえばエウステノプテロンは、四肢動物の祖先の近縁種であって、直接の祖先ではないと考えるのが妥当である。そのため、肉鰭類の系統樹を図Aのように書くのは不適切で、図Bのように書くべきなのだ。

【図】肉鰭類と四肢動物の系藤樹B

さらにいえば、四肢動物の直接の祖先である化石が運よく見つかったとしても、その化石が四肢動物の直接の祖先なのか、その近縁種であって直接の祖先ではないのか、を決める手段を私たちは1つしか持っていない。それは化石からDNAを抽出して、ゲノムを解析することだ。ただし、この手法は、時代が新しくてたくさん見つかる化石にしか使えない(たとえば最近数千年間のヒトの移動などは、この方法で詳細が明らかにされつつある)。今回のようなデボン紀の化石には、使うことができないのだ。

つまり、直接の祖先が見つかる可能性はものすごく低いうえに、万一見つかったところで、それが直接の祖先だと知るすべがない。だから私たちは、そもそもミッシング・リンクを見つけることはできないのだ。

進化の跡を辿るにはどうすればよいか

祖先を見つけることができないのなら、私たちはどうすればよいのだろう。化石を使って、生物の進化の跡をたどることは、そもそも無理なのだろうか。

もちろん、そんなことはない。直接の祖先の化石は見つからなくても、直接の祖先と形質を共有している近縁種の化石を見つければ十分だ。そういう近縁種の化石を調べることによって、私たちはさまざまな進化の道すじを知ることができるのだ。たとえば、四肢動物が進化するのに先立って、鼻腔が口につながったり、尾鰭が小さくなったりしたことを、知ることができる。それを知るために、直接の祖先の化石を見つける必要はないのである。

私たちは過去のことを考えるとき、つい現在との違いにばかり注目してしまう。でも、同じところだってたくさんあるのだ。たかだか数億年前の地球なら、生物の多様性は今と同じぐらい高かっただろう。ものすごくたくさんの種が生きていたことだろう。そんななかで、直接の祖先となったたった1種を見つけるなんてほぼ不可能だ。でも、それでも構わないである。

【写真】始祖鳥の化石
  近縁種の化石から、私たちはさまざまな進化の道すじを知ることができるのだ(1910年にドイツで発見された始祖鳥の化石) photo by gettyimages