進化の「ミッシング・リンク」はなぜ見つからないのか

ヒトとサルの間にあるもの
更科 功 プロフィール

四肢動物の進化

私たちは陸上に棲んでいる脊椎動物である。陸上に棲んでいる脊椎動物は、大きく4つのグループ(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)に分けられる。これらの多くは肢が4本なので、まとめて四肢動物と呼ばれる。

一方、水中に棲んでいる脊椎動物の多くは魚類である。魚類のなかにはにく類というグループがあり、シーラカンスやハイギョが含まれる。四肢動物は、このハイギョの仲間から進化したことがわかっている。

肉鰭類から四肢動物が進化したのは古生代のデボン紀(約4億1900万〜3億5900万年前)である。肉鰭類から四肢動物が進化するにあたって、体の構造がいくつも変化した。ここでは、その中の2つだけを考えよう。

まずは鼻腔(びこう)だ。鼻腔とは、鼻の中の空間のことで、もともとは行き止まりの穴だった。しかし、エウステノプテロンというデボン紀の肉鰭類では、この鼻腔が口につながっている。これは、肺に空気を送るための通路として使えるので、便利な構造だ。

【イラスト】エウステノプテロンの想像図
  エウステノプテロンの想像図 (illustration by gettyimages)

その後、イクチオステガという四肢動物がデボン紀の終わりごろに現れた。このイクチオステガは、陸上を歩くことができたと考えられている。その根拠の一つは、びれが小さいことだ。もし尾鰭が大きい動物が陸上を歩いたら、尾鰭が地面に擦れて、ボロボロに破れてしまうからだ。このように、鼻腔と口がつながり、尾鰭が小さくなるという進化を経て、今の私たちがいるのである。

【イラスト】イクチオステガの想像図
  イクチオステガの想像図。ポーランドの切手に描かれたもの (illustration by iStock)

さて、いま述べたハイギョとエウステノプテロンとイクチオステガとヒトの関係を、系統樹で表してみよう。鼻腔が行き止まりだった祖先から、鼻腔と口がつながったエウステノプテロンが進化して、それから尾鰭が小さくなったイクチオステガが進化して、それから完全に陸上生活に適応したヒトが進化した。だから、系統樹は図Aのようになるはずだ。つまり、イクチオステガはヒトの祖先で、エウステノプテロンはイクチオステガの祖先ということになる。

【図】肉鰭類と四肢動物の系藤樹A

仮にイクチオステガの化石が見つかっていなかったとしたら、イクチオステガがミッシング・リンクになる。ヒトとエウステノプテロンのあいだのミッシング・リンクだ。

でも、なんだか変な気がする。図Aのような進化なんて、本当にあるのだろうか。