この国で「自称心理カウンセラー」が乱立する現状はようやく変わるか

「公認心理師」をご存知ですか
原田 隆之 プロフィール

一番の問題は何か

このように、ドタバタのなかで実施された第1回の公認心理師試験であるが、私が考える一番の問題はほかにある。それは、肝心の大学のカリキュラムについてである。

カリキュラムを見ると、本当に古色蒼然というか、古臭いだけでなく、エビデンスのない技法や理論がずらりとならんでいる。これは、「業界」の重鎮たちの声が大きかったからだろう。

心理臨床の世界は日進月歩で、かつて主流とされていたフロイトやユング、さらには最近人気のアドラーのような精神分析学には、エビデンスがないことが、数々の研究の積み重ねで明らかになっている。アメリカの大学のカリキュラムでは、彼らは「心理学史」のなかにしか登場しない。

さらに、精神分析学を理論的基盤とする描画法やロールシャッハテストなど、「投影法」と呼ばれる心理検査もエビデンスを欠いており、正確な検査にはならないというのが世界の常識である。ロールシャッハテストとは、インクの染みをみて性格や精神障害を診断するというもので、実際に受けたことがある人も多いだろう。

ロールシャッハテスト 〔PHOTO〕iStock

エビデンスがないと言われても、長年の間、それを学び、臨床場面で活用してきた人たちは、それを手放すことに激しく抵抗する。そして、「エビデンスだけが大事じゃない」「悪口を言うな」などと感情的に「逆切れ」する。

古い人は仕方ないとしても(本当は仕方なくはないが)、今後もこのような時代遅れのカリキュラムで学んだ人たちが、公認心理師として社会に出ていくわけである。

時代遅れだけならまだよいが、治療においても、検査においても、エビデンスがないものを振りかざして、悩める現代人の「こころ」の問題に対処できるのだろうか。それは自己満足以外の何物でもない。

実際、今回の試験問題にも、カビの生えたような理論や技法の問題が数多く出題されていた。私などは、これらの問題に不正解であった者こそを合格とすべきではないかと思ったくらいである。

このような問題点を改めるためにも、広く公認心理師の存在と仕事を世の中の方々に認知していただき、監視していただきたいと切に願う。

なぜなら、われわれ公認心理師の仕事は、われわれの自己満足のためにあるのではなく、人々の心と社会の健康や幸福のためにあるのだから。