この国で「自称心理カウンセラー」が乱立する現状はようやく変わるか

「公認心理師」をご存知ですか
原田 隆之 プロフィール

そもそも現任者とは

しかも、その研修を受けた後、肝心の試験の受験資格があるかないかでも、大きくもめにもめた。受験には、講習の修了証明書とともに、心理臨床の実務経験が5年以上あることを証明する書類を送付する必要があった。

私のように公的機関や大学の心理相談室、あるいは医療機関などで勤務している者は、比較的簡単に「現任者」であることが認められたが、問題は心理相談室やカウンセリング・ルームなどを開業している人たちや、そこで勤務している人たちだった。

伊藤絵美さんは、わが国における認知行動療法の第一人者で、数多くの論文や書籍があり、多くの心理専門家の養成や研修にもリーダーシップを発揮している。おそらく、日本の心理専門家で彼女の名前を知らない人はいないだろう。もちろん、臨床心理士資格も有している。

その伊藤さんが、「受験資格なし」ということで、受験票がもらえなかったのだ。伊藤さんは、「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」という心理相談室を経営しているが、提出した登記簿に「心理カウセンリング」を業務としている旨明記していたにもかからず、「経営」との文言があったことから、心理実務とは違うと解釈されたというのが理由らしい。

受験資格を審査したのは、国から試験の運営を委託された「日本心理研修センター」であったが、単に文字面だけを見て、本人の活動実績のような内容は一顧だにせず、「受験資格なし」としてはねつけたのである。本当にあきれ返って開いた口がふさがらないとはこのことだ。

もちろん、何万人も応募者がいるなかで、その要件の審査をするのは、大変骨の折れる作業であることは想像できる。

しかし、臨床心理士が現に3万人いて、それに加えて多数の医師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、公務員、そして民間カウンセラーなどが応募してくることは、わかっていたはずだ。

講習の件といい、人手が足りないからということは理由にならないし、重要な国家試験の受験資格審査が、こんな杜撰なものでいいはずがない。

伊藤さんは厚労省と粘り強く交渉し、なんと試験の3日前(!)というギリギリの段階で、受験票が送られてきたという。その間、受験できるかどうか宙ぶらりんのまま、受験勉強を続けるということは、さぞかし複雑で不安な毎日だったことだろう。

しかも、同様の理由で受験資格を却下された人々はほかにもたくさんおり、求められた追加書類を提出したにもかかわらず、受験できなかった人もいた。このように明暗が分かれたことについて、センターからは何の説明もないという。