廃墟化の原因は「管理組合」
マンションは、基本的に鉄筋コンクリート造である。一般に、鉄筋コンクリート造の建物は100年程度の耐用性があると言われている。

ただ、これは実証されたわけではない。われわれは今、鉄筋コンクリートという比較的新しい建築素材について、さまざまな建造物を作って「何百年、あるいは何十年使えるのか」という壮大な実験をしている最中なのだ。結論が出るのは、あと何十年か先のことになるだろう。
数年後、あるいは数十年後、日本でマンション廃墟化の問題が深刻化するとすれば、それは鉄筋コンクリートの耐用性など、物象的な問題ではなく、人為的な過ちに起因するものであろうと私は推測している。
人為的な過ちを起こす主体は、管理組合だ。管理組合が機能しなくなったマンションは、必ずや廃墟化する。それは間違いない。
すでに、首都圏ではいくつか管理組合が機能不全に陥っているマンションがある。私も何物件かモニターしているが、かなり危うい状態である。
あるいは、なかで争いが起こり、訴訟沙汰になっていたり、重要な議案が可決されなくなっていたりする管理組合も多い。
私は、管理組合というものは、その組成のあり方からして内部で争いが起きやすい組織体だと考えている。
まず、マンション管理の主体となる管理組合とは、そもそもが平等な権利を有する区分所有者の組織である。
この組織は学校や企業、役所などとは異なっている。学校や企業、役所などは組織がピラミッド型に作られていて、上と下が明確に定められている。命令を発する側と、受けて従う側だ。
管理組合には、そういう上下関係はない。強いて言うなら、管理組合は自治体だ。
管理組合の理事長は首相兼議長。理事会は議会。区分所有者は市民。管理費や修繕積立金は税金だと考えればいい。
国家、都道府県、市区町村など、規模や単位の大小にかかわらず、予算や許認可権限を持っているところは、しっかりと見張ってないと必ず悪いことをする輩が出てくる。最終的に自分の懐が潤うように予算案を組んだり、息のかかった連中が甘い汁を吸えるように許認可権限を恣意的に行使したりする。
じつのところ、管理組合も同じ構造なのだ。言ってみれば、利権を持った組織。そのことを忘れてはならない。