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野村克也の名言「王や長嶋はヒマワリ、私は月見草」の真意が分かった

人の成長に必要なものとは
データにもとづいた野球理論を駆使し、ヤクルト、阪神、楽天といった弱小球団を優勝に導いた名将・野村克也。勝利の秘密は、みずから取っていた膨大な「メモ」にあるという。著書『野村メモ』は、その「メモの極意」を初めて公開した一冊だ。現役時代、「王や長嶋はヒマワリ。私は日本海の海辺に咲く月見草だ」との名言を残した野村氏。この言葉には、実はこんな深い意味が込められていた……。本人に当時を振り返ってもらった。

「内なる目標」を持て

現役時代、一軍に定着し、私が一番最初に掲げた目標が「3割、40本塁打」だった。だが、こういった数値的な目標はあくまでも個人的なことであるので、当時は公にすることはなかった。

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基本的に、プロ野球のみならず、一般のサラリーマンの方々でも「目標」として掲げるのは「ライバル社に勝つ」「売上を伸ばす」「利益を上げる」といった、集団の実益に適うものであるはずだ。

自分の属する集団の利益を上げるために、「集団の中の一員」としての目標を掲げるのは大いに結構だが、それ以外にも、公にはしないまでも自分の中でいろいろな目標を持っておくことは大切なことだと思う。

「3割、40本塁打」という目標を掲げ、それを達成した私は、次なる「内なる目標」を掲げた。それは「王貞治に勝つ!」というものだった。1963年、私は52本の本塁打を放ち、それまで13年間破られることのなかった51本の年間最多本塁打記録を更新した。誰よりも努力し、手に入れた新記録である。

「10年は抜かれまい」。そう思ったのも束の間、翌年に王貞治が55本塁打を打ち、私が苦労して手に入れた最多本塁打の記録をあっさりと塗り替えてしまった。

こちらが戦後初の三冠王に輝けば、向こうもすぐに三冠王となり、マスコミからフラッシュを浴びている。今でこそ、パ・リーグはセ・リーグとまったく遜色のない人気リーグとなったが、私がいた頃はセ・リーグの人気に太刀打ちできず、中でも王貞治の属する読売巨人軍は日本中にファンを持つ、まさに日本一の人気球団だった。

 

何をしても日陰の存在のパ・リーグで脚光を浴びようと思ったら、セ・リーグにも通じるような記録を作るしかない。そう思って日夜練習に励んでいるのに、気がつけばおいしいところをすべて王に持っていかれる。

私が通算600本塁打を放った1975年、マスコミの取材で「王や長嶋はヒマワリ。それに比べれば、私なんかは日本海の海辺に咲く月見草だ」と発言したのは、そんな自分の現状をそのまま表現しただけだった。とは言え、私が現役時代にそこまで成績を伸ばせたのは、王や長嶋の存在があったからである。

もし、あなたが身近な目標を立てられずに困っているのだとしたら、周囲にいるライバルに目を向けてみるといいかもしれない。

「あのライバルには絶対に負けたくない」

そう思わせてくれる人が身近にいるとしたら、それはとても幸運なことだ。ライバルの存在なくして、人としての成長なし。まずはライバルのいる環境に感謝し、その上でライバルに勝つための策を練るといいだろう。

数値的な目標、あるいは個人的な目標はあくまでも胸に秘め、チームの勝利のため、自分の属する集団がいい結果を残すために目標を掲げるのが、一流の在り方なのだ。