1972年、家族みんなで見ていたテレビ番組を懐かしむ

遠い昔の家族団欒
週刊現代 プロフィール

早瀬久美がかわいかった!

'72年には青春ドラマの傑作もたくさん生まれている。なかでも、代表格は、村野武範が主役に大抜擢された『飛び出せ!青春』だろう。村野演じる教師・河野武は「レッツビギン」を合い言葉に奮闘する。映画監督の河崎実氏はこう語る。

「普通、学園ドラマでは先生が、いきなり生徒を殴ることはありません。しかし河野は第1話でそのタブーを犯すんですよ。『教師だから多少ナメたことをしてもいいと思ったら、大間違いだ。俺にナメたことをするやつは、遠慮なくブン殴る』って。

これが何とも痛快でしたね。このドラマでは生徒と同じ目線で教師がハチャメチャな行動を展開する。

この後に『3年B組金八先生』('79年~)が流行りますが、60歳前後の僕らの世代にとってのカリスマは村野武範なんです」

同年2月に最終回が放送された森田健作の『おれは男だ!』もまた名作。テレビドラマに詳しい社会学者・太田省一氏が語る。

「多くの男性がマドンナ役の早瀬久美のファンになりました。今見ると、高校生なのにメイクがバッチリですが(笑)。

早瀬さんは女子生徒のリーダー役で、森田さんと対立するのだけど、実は彼のことが好き。そんな青春ドラマの定番がきちっと描かれていました。

もう一人のマドンナ役が、剣道部の主将役を演じた小川ひろみさん。主人公をめぐって、2人のマドンナが恋のさや当てを繰り広げる。当時の小中学生は、その三角関係にハラハラしました」

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当時の学園青春ドラマの2大ヒロインも忘れてはいけない。岡崎友紀の『なんたって18歳!』『ママはライバル』(TBS系)、吉沢京子の『レモンの天使』(フジ系)も10代の間でヒットした。

そして、'72年は時代劇の当たり年でもある。

「'71年に大映が倒産したこともあり、映画界で時代劇を制作していたスタッフがテレビの世界で仕事をするようになりました。だから、この年の時代劇にはクオリティの高い作品が多いんです」

そう語るのは、コラムニストのペリー荻野氏。『水戸黄門』『大岡越前』といった人気シリーズが続く一方で、中村敦夫の『木枯し紋次郎』、三船敏郎の『荒野の素浪人』、林与一、緒形拳らの『必殺仕掛人』(テレ朝系)の放送が同年に開始された。

「『木枯し紋次郎』には、日本的な集団主義から距離を置いた無宿渡世人への憧れがどこか感じられるんです。

組織に縛られない象徴が紋次郎。中村敦夫さんは長身のインテリで、陰のある役がよく似合いました。

それでいて、時代劇に慣れていないこともあり、文字通り体当たりの演技。田んぼの中でドロドロになった殺陣は画期的でしたね。当時のフィルムの映像は端整かつ緊迫感があって、今見直しても格好良いです」(前出・荻野氏)

 

日本大学名誉教授でドラマ評論家のこうたきてつや氏は、平賀源内を主人公にした『天下御免』(山口崇主演)を推す。

「『天下御免』には、時代を風刺する痛快さがありました。早坂暁さんが描く主人公は、どんな悲惨なことがあっても飄々としていて面白い。そういう人間像を描きながら、今でいう公害などの社会問題や権力の腐敗を取り上げた斬新な作品でした。

ほかに'72年でいえば山本周五郎が原作の『赤ひげ』(NHK)は、倉本聰さんの人間描写の転換点になるような作品でした。主演の小林桂樹が演じる医師がとても偏屈なんです。倉本さんはこの作品を契機に、欠点を描かないと魅力的な人間にならないといった作劇を身につけていきます。

時代劇ではありませんが、今の50代が見ていたNHKの『少年ドラマシリーズ』も挙げたい。

第1作がSFドラマ『タイム・トラベラー』。『時をかける少女』の最初の映像化作品です。少年と少女の別れがベタベタせずにドライに描かれて、むしろ良かった。特定の世代は、このドラマに強い思い入れがあると思います」