「東大合格が人生のピークでした」…世間が知らない東大格差の実態

入学時点で結果は決まっている…?
週刊現代 プロフィール

一握りの天才でないならばうまく生きていく方法を見つけて「東大までの人」になるしかない。しかし、神童と呼ばれていた頃との落差に耐えられず、それすらなれない「東大だけの人」が存在するのだ。

冒頭の小林さんはまさにこのタイプだった。周りに差を見せつけられ、プライドを傷つけられたが、大学3年になると一発逆転を狙って司法試験に挑戦することにした。

「試験勉強は小さい頃からずっとやってきた。自分にはこれしか取り柄がないと思い、猛勉強を始めたのです」(小林さん)

なんとか東大の法科大学院は出たが、司法試験に落ち続け、昨年5月の試験にも失敗してしまった。気がつけば、ただ時間だけが過ぎ、今年30歳になる。

「もう就職先もないでしょうから、挑戦し続けるしかありません。同級生は仕事で責任ある立場を任され、結婚している人もたくさんいます。

自分がどうしようもないことはわかっています。でも心のどこかで司法試験に合格して、弁護士として大成し、それこそ知事か市長にでもなれれば巻き返せるのではないかと思ってしまうんです」

茨の道だとわかっていても、もはや後戻りもできず、突き進んでいくしかない。「自分は東大生だった」というプライドだけが小林さんの拠り所なのだ。

 

子どもを前にしたり顔

小林さんがいま充実を感じるのは試験勉強の合間を縫って、週に2回、3時間担当している塾講師の仕事である。

「熱心に自分の授業を聞いてくれる生徒たちを前にすると、東大に合格した頃の栄光を思い出せます。

たとえ不安定な職業だとしても、東大卒というだけで生徒たちは『先生』と呼んで尊敬してくれる。再び司法試験に失敗してしまったら、このまま予備校講師になるのも一つの手だと思っています」(小林さん)

司法浪人生にしても塾講師にしても、社会との接点が少ない。しかし、一般社会にもこうした「東大だけの人」はたくさんいるだろう。

「東大を出たのに使えないやつだと言われると、意固地になって、早慶とか明治のくせに、と序列意識や差別意識をむき出しにする人はいますよね。それで精神的なバランスを保っているのでしょうが、周りからしたらはた迷惑な話です」(東大経済学部出身の経済評論家・山崎元氏)

東大までの人になるのか、東大からの人として尊敬を集めるのか、それとも東大だけの人として疎まれるのか。入学時点で結果は決まってしまっている――。

「週刊現代」2019年3月23日号より