「東大合格が人生のピークでした」…世間が知らない東大格差の実態

入学時点で結果は決まっている…?
週刊現代 プロフィール

いつまで勉強するつもり?

大学での研究をもとに、独自の世界を作り出して注目を集めているのが教養学部3年生の中野智宏氏(21歳)だ。中野氏は大陸や言語、歴史までを緻密に設定した架空の世界、「人工世界」を小学5年生の時から作り始めた。

「幼い頃からファンタジーが好きでした。作品の中に呪文や架空の言語が出てくるのが面白かった。そこで、自分でファンタジーに出てくるような架空の世界を作ってみようと思ったんです。

でもただ物語を作るのではなく、物語の登場人物たちが使う言葉まで作ってみたかった」

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幼い頃に、自分の考えた世界をノートに書いて空想に耽った経験のある人もいるだろう。しかし、言語まで独自に作り出すと言われても、常人にはピンとこない。それを可能にしているのが、中野氏の人並み外れた語学力である。

「大学の授業ではフランス語、サンスクリット語、アラビア語、ヘブライ語、古典ヘブライ語、シリア語、ペルシャ語、トルコ語、ラテン語を学びました。アイルランド語は独学で勉強中です。

各言語の文法を正しく理解するために言語学も勉強しています。そうした勉強が人工言語を作る上で役立っています」

一昨年の夏に東大発のオンラインメディアで中野氏の活動が取り上げられると、たちまち学内外で大反響となり、毎日新聞でも新進気鋭のクリエーターとして中野氏の名前が報じられた。

東大からは想像もつかない業界で活躍している先輩もいる。東大出身者で初の落語家の春風亭昇吉氏(39歳)だ。大学で落語研究会に所属していた昇吉氏は在学中の'06年に全日本学生落語選手権・策伝大賞で優勝した。

その後、高齢者施設やホスピス、盲学校に出向いてボランティアで落語を披露し、'07年にはその功績を称えられて、東京大学総長大賞を受賞している。

「ちょうど、3年の終わり頃、就活のためのオリエンテーションがありました。就活の心得を話している人が、エイエイオーと叫んでいる姿を見て、僕はこのノリにはついていけないな、と思ってしまった。そこで、好きな落語の道に進もうと決心しました」

そのまま卒業して、師匠の春風亭昇太氏のところへ弟子入りを願い出た。自分の選択に今でも後悔はないと語る。

「そもそも東大を卒業して一流企業に入る人生は、本当に幸せなのかという疑問はあります。

弁護士や証券アナリストになった友人達はいつも『仕事を辞めたい』と愚痴をこぼしている。僕は好きなことしかやっていないので、嫌なことや悩みが何もないんです」

 

彼らのように、「東大からの人」はやりたいことを見つけ、最短距離で突っ走る。これができなければ、身の程をわきまえ、「東大までの人」になるしかない。

だが、「東大までの人」はまだ救いようがあると語るのは、東大経済学部出身の飯田泰之氏(明治大学准教授)だ。

「『そうだよね、俺は特別じゃないもんね』と言って、気楽な人生を歩む方向に舵を切れる人は、ある意味で成功者と言えるでしょう。しかし、本当に救いようがないのは、平凡であるのに、周囲の尊敬を集めたがる東大生です」(飯田氏)