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「東大合格が人生のピークでした」…世間が知らない東大格差の実態

入学時点で結果は決まっている…?

本郷キャンパスで喜びを爆発させる受験生たち。しかし、彼らはその先で待ち構えている悲劇をまだ知らない。世間では知られることのない、東大生が直面する「東大内格差」の厳しい実態をレポートする。

出身高校のハンデ

「私は東大に合格した時が人生のピークでした。今でもあの瞬間に戻りたいと思ってしまいます」

うつむき加減でこう語るのは東京大学法学部を'11年に卒業した小林明彦さん(仮名・30歳)だ。

3月10日、今年も東京大学の合格発表が行われた。さまざまな誘惑を排し、苦しい受験戦争に勝利した受験生たちは、喜びもひとしおに違いない。

しかし、幸せな時間は長くは続かないかもしれない。受験戦争は終われども、今度は東大内での厳しい競争が始まるのだ。

受験に合格した東大生をまず待ち受けているのが入学式前の4月初旬に開催されるオリエンテーション合宿、略してオリ合宿だ。クラスメイトたちと親睦を深めるために、2年生が主導し、1泊2日の旅行に出かける。

冒頭の小林さんは中国地方の県立高校出身だったため、周りに知り合いなどいない。友人を見つけようと勇んで集合場所である駒場キャンパスの学生会館前へ向かった。

しかし、着くと40人ほどのクラスメイトの中にすでに談笑にふけっているグループがある。麻布、開成、筑駒など都内の超一流校出身者たちだ。この段階で小林さんは怖気づいてしまった。

「彼らは東大専門塾で一緒だったりして、入学した時点で横のつながりができている。輪に入ろうと思っても、塾の先生のモノマネをしていたり、模試の点数を自慢しあったりしていて、まったく会話に入っていけなかったのです」(小林さん)

なんとかしようと趣味の鉄道の話を振ってみる小林さんだが、場はしらけてしまうばかりだ。

「私は幼い頃から父親に東大に行けと言われて、ひたすら勉強ばかりしてきました。漫画を読むことも禁止されて、テレビもNHKくらいしか見せてもらえなかった。

でも東大に入ってみると、遊び方を知っていて、スポーツも得意、もちろん頭もよくてコミュニケーション能力が高いといった人たちがたくさんいる。受験勉強しかできない私はいったいなんなのだと、オリ合宿で思い知らされました」

出鼻をくじかれ、落ち込む小林さんだったが、そもそも勉強をするために大学に入ったのだから、と気を取り直した。履修登録では専門の法学系の講義のほかに、古英語を読む授業などを選択した。しかし、これがさらなる悲劇の始まりだった。

「意気込んで取ったはいいものの、自分が必死に動詞の活用を覚えている間に、講義はどんどん進んで、短い小説を輪読し始めている。

しかも、私以外の人は勉強をしている形跡もないのに文献を読んであれこれ議論をしているのです。とてもじゃないがついていけないと思い、途中で行くのをやめてしまいました」

 

地元では神童と呼ばれ、勉強もできると自負していた小林さんだったが、ここで完全に心が折れてしまった。

このとき、他の東大生たちはどうしていたのか。

「開成や麻布から来たヤツらは『あの先生は単位をくれないからやめておけ』など、ラクに単位を取る方法を先輩や友人から聞いている。

一方、そうしたネットワークのない私のような学生はなかば教授の趣味のような難解な授業を取ってしまい、ついていけなくなって、単位を落としてしまうのです」(小林さん)

実力が伴わない講義を取ってしまった東大生たちは「自分は凡人である」ということを悟り、1年生の後期からは情報を集めてラクに単位が取れる科目だけを履修するようになる。

やがて、サークルやバイト生活に精を出し、勉強は最低限、「東大生」という看板は持っているものの、あくまで自分は天才ではないと自認し、身の程をわきまえるようになる。すなわち平凡な「東大までの人」となるのだ。