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ある日突然、難聴に…自殺する人もいる「突発性難聴」本当の怖さ

我慢していて手遅れになる人も

朝目覚めると急に、耳の中から不快な異音が聞こえてくる。予兆もなく発症する突発性難聴。原因がわからず、確実な治療法もない。実際になった人たちはどんな思いで病気と付き合っているのか。

最初は気づかない

それはある日、突然やってきた。

「左耳から『チリン、チリン』という鈴のような音が聞こえてきたのです。最初は『あれっ』と思いましたが、あまり気にはしませんでした。ところが、そのうち寝ている間にも『チリチリ』という音が聞こえるようになってきたのです。

しかも、耳をふさいでも『チリチリ』と音がするので、『これは、耳の中から鳴っているんだ』と気づいて、耳鼻咽喉科を受診したのです」

こう語るのは、演歌歌手の原田悠里さん(64歳)。

北島三郎に弟子入りし、'82年にレコードデビュー。'99年には『津軽の花』で紅白初出場を果たした。その後、2年連続で紅白に出場。これからさらに歌手として上を目指していこうとしていたその矢先、原因不明の耳鳴りに襲われた。

医師から下された診断は、「突発性難聴」――。年齢は46歳だった。

「われわれ歌手にとって耳は、命です。耳が聞こえないと声も出せないし、当然歌うこともできません。ちゃんと音程がとれているのか不安になり、仕事にも支障が出るようになりました」(原田さん)

もうステージに立てないかもしれない。そんな焦りをよそに、寝ても覚めても一日中、「チリチリ」という耳鳴りは続いている。いつ終わるとも知れない恐怖と不安。「そのストレスは、言葉では表せない」と原田さんは言う。

 

実際に突発性難聴を患った人は「耳に膜が張ったような違和感がある」「水中にいるような感じ」と表現する。

はたの耳鼻咽喉科院長の波田野洋一氏が語る。

「突発性難聴という病気は、文字どおり突然に発症する難聴です。徐々に症状が出てくるものではなく、特に予兆もありません。

『朝起きてみたら急に聞こえづらくなっていた』という人が多いですね。基本、片方の耳だけで両耳に起こることは大変まれです。

耳鳴りに加えて、時には、めまいを伴うこともあります。聴力が下がる部位によって耳鳴りの音の聞こえ方が変わってきますが、一般的には『キーン』とか『ピー』といった音が多いと言われています」

昨日までなんともなかったのに、ある日突然やってくる。それが突発性難聴の怖いところだ。

突発性難聴は主に30代~40代に発症しやすいが、近年は高齢者の患者も珍しくない。

耳鼻咽喉科・日本橋大河原クリニック院長の大河原大次氏が語る。

「いろんな統計がありますが、国内では年間に3万~4万人の方が突発性難聴を発症していると言われています。男女差はありません。現場の感覚からすると、気が付かずに受診されない人もいるので、実数はもっと多いと思います」