年金暮らしの人が「持ち家を売る」のが大間違いである5つの理由

そして、不幸のどん底に落ちていった…
週刊現代 プロフィール

家が途絶えるという恐怖

夫、妻ともに65歳の夫婦が自宅を売り、2000万円が手元に残ったとしよう。二人で家賃12万円の賃貸に住めば、家賃と更新料だけで、この2000万円を約13年で食いつぶす計算になる。

13年後、78歳になる夫の平均余命は約10年、妻は約13年もある。もし妻がこの物件に住んだまま13年生きると、家賃約1950万円が重くのしかかる。家賃は「長生きリスク」に直結する。

 

自宅を売却し、賃貸に住み替えた場合のリスクはそれだけではない。今回、定年後に家を手放し、賃貸マンションを転々としながら生活してきた人の話を聞いた。

「自宅は3000万円で売れたので、賃貸でも最後までいける計算でした。しかし、歳をとって賃貸に住み続けるのは別の大変さがあります」

こう語るのは東京都に住む島田若子さん(75歳・仮名)だ。夫の退職後、自宅を売却して駅近のマンションを借り、夫婦で快適な暮らしを送っていた。しかし事態が急変したのは、1年前に夫が亡くなってからだ。

「10年ほど住んでいたマンションから、老朽化を理由に立ち退かなければいけなくなったのです。次の住まいが見つけられず、親戚に頼み込んで居候させてもらい、物件を探しました」

島田さんは不動産屋と内見には行くものの、大家に契約を渋られたり、出した入居審査に落ちることもあった。

「足が悪いので、エレベーター付きで病院と駅に近い物件に住みたい。でも、当てはまる物件は、断られてばかりでした」

島田さんが入居できる賃貸マンションを見つけるのに結局、1ヵ月もかかった。築35年、駅から徒歩15分、エレベーターは付いているものの、動くたびに不自然に大きく揺れ、キーッと音が鳴って心もとない。

「もしまた引っ越すことになれば、こうした苦労をすることになるのか」と思うと、いっそ自宅に住み続ければよかったと島田さんは後悔している。

高齢者が賃貸を借りるのは簡単ではないと、ファイナンシャルプランナーの川部紀子氏は語る。

「入居審査では、高齢者の健康状態や年齢を理由にして落とされます。さらに、一人暮らしであれば、賃貸契約はなおさら難しい。家主は、孤独死や重い病気、さらには認知症になって家賃が途絶えるといった事態を不安に思うのです」

施設に入るほどではないが、身体が不自由で古い物件は避けたいという人もいるだろう。だが、それも難しい。

「築浅でオーナーがローン返済中だとリスクを避けたがり、高齢者はより借りにくくなります。結局、築年数が30年を超えた物件に入ることになるのです」(同)

元気で長生きするのは喜ばしいことかもしれない。しかし、思ったように借りられない賃貸を苦労して探し、住居を転々とし続けるのは不幸だ。