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年金暮らしの人が「持ち家を売る」のが大間違いである5つの理由

そして、不幸のどん底に落ちていった…

人生の終盤、減っていく貯金に怯えて、苦労して手に入れた持ち家を売ってしまう人は多い。そんな彼らを待つのは、カネもなく居場所もない日々だ。最後の虎の子を手離したとき、何が起こるのか。

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家もないのにカネもない

「最後の資産である家を売ってしまった私は愚かでした。このままだと貯金が10年で尽きてしまう。そう考えて手放したのですが、誤りでした」

やつれた顔でこう語るのは、東京都板橋区に暮らす藤原隆夫さん(77歳・仮名)だ。妻の和子さんを4年前に亡くし、子どもはいない。

8年前、藤原さんは東京都小平市の自宅を売却し、板橋区の賃貸マンションに移り住んだ。

「当時は、自宅を売ったカネで豊かな老後を送れると信じていました。ですが、いまの現実はカネもないので毎日カップラーメンばかりで、用事もなく、外に一切出ない生活を送っています」

当時、藤原さんが家を売ったのは「貯金寿命」を延ばすためだった。

 

「貯金寿命」とは、いまある貯金が底をつくまでの期間のことだ。藤原夫婦の貯金は600万円あったが、日々の支出は夫婦の年金では賄えず、年間60万円を取り崩していた。

単純計算で、あと10年で貯金寿命を迎えてしまう。その事実に怯え、生活資金のために家を売ったのだ。

「売却により、約2000万円の現金が手に入りました。でも、家賃を払い続けるいまの生活は苦しい。なぜあのとき売ったのかと後悔しています」(藤原さん)

何より、生活が苦しくなっても住むところだけはあるという安心感は大きい。そして、そのありがたみは家を手放して初めて知るものでもある。

藤原さんのように、家を売らなければよかったと悔いる人は数知れない。ファイナンシャルプランナーの太田差惠子氏はこう警鐘を鳴らす。

「65歳で定年を迎えてから、後先考えず自宅を売るのは自殺行為といっていいでしょう。貯金寿命やライフスタイルを吟味せず、勢いで家を売る人がいますが、成功事例はほとんど聞きません」