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子供のいない「おふたりさま」夫婦に「相続トラブル」が続出中のワケ

準備すべき「死後の手続き」がある

「おふたりさま」の相続問題

本当は相続人がいるのに、その存在を普段は意識しないためにトラブルを招くケースは少なくない。

それが、子どものいない夫婦、つまり「おふたりさま」の相続の場合だ。

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二人きりの老夫婦の場合、夫か妻のどちらかが亡くなれば、その遺産はすべて配偶者のものになる。わざわざ遺言書を作成する必要はない――。こう考えて、そのまま亡くなる高齢者は多い。

ところが、これは間違いだ。

おふたりさまの場合、民法の規定する法定相続人は、故人の親、きょうだい、次いで甥や姪の順になる。これを念頭に置いていない人は多く、遺産をめぐるトラブルが多発している。

 

大阪府在住の向井淑子氏(77歳・仮名)には、50年以上連れ添った夫がいた。子どもはなく、小さな自宅で、夫と二人暮らしを続けてきた。

夫が亡くなったのは、つい2ヵ月前のことだった。向井氏が語る。

「半年前、夫は末期がんの宣告を受けました。病院からの帰り道、夫は『俺たちには子どももいないし、財産はお前が全部もらえる。だから、俺が先に逝っても安心だからな』と、私に話しました。

自分が大変な状態なのに、第一に私の心配をしてくれていたのです。そんな夫に遺言書を書かせておこう、なんて考えはまったくありませんでした」

夫の財産は、自宅を含む不動産が5000万円分と、預貯金が1400万円。質素な生活を送る向井氏が余生を過ごすためには十分だった。

夫婦ともに高齢だったこともあり、近しい親族はいなかった。夫の言うとおり、死後手続きに向けて、生前にしておくべき準備などない。向井氏はそう考えていたのだが――。