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平成最後の歌舞伎座で、空席が目立ってきた必然的な理由

リピーター獲得に失敗したのは明らか
中川 右介 プロフィール

国立劇場はさらに悲惨

それでも歌舞伎座はまだいい。悲惨なのは、国立劇場だ。

あまり採算のことは考えなくてもいい劇場とはいえ、昨年10月の中村芝翫の『平家女護島』、11月の中村梅玉の『名高大岡越前裁』とも、空席が目立つどころか、空席だらけだった。

『平家女護島』も、その一部の『俊寛』はよく上演されるが、この月は、それ以外の場面も上演するものだったし、『大岡越前』も滅多に上演されないもので、学術的な価値はあった。逆に言うと、滅多に上演されないのは、面白くなく人気がないからでもある。

となれば、人気のある役者がやるしか興行的成功は見込めない。

だが、芝翫も梅玉も、芸はあるとしても集客力はない。歌舞伎座に他の役者とともに出ている場合は、ひとりひとりの人気は数字になかなか現れないが、大劇場で単独で主演すれば、一目瞭然となる。

松竹が、人気のある役者とない役者を組み合わせることで、興行として成立させているのがよく分かる。賢い方法だ。さすが120年も興行の世界で生き抜いた会社だけのことはある。

もともと演劇は、1ヵ月(25日)の全日が完売になるほうが珍しいとも言える。それを達成しているのは、宝塚歌劇団と帝劇などのミュージカルくらいだろう。

歌舞伎も数年前までは活況だったのは、松竹が座組に工夫を凝らしていたからとも言えるが、ここにきて、かなり厳しい状況になっている。

客足が落ちているのは、客の眼から見ても明らかなのだから、松竹の経理はもっとリアルに数字を摑んでいるはずだ。

模索する若手たち

松竹と歌舞伎役者が模索し、いろいろな手を打っているのは分かる。

3月の海老蔵の六本木歌舞伎『羅生門』はジャニーズのV6の三宅健を共演者に招聘し、そう大きな劇場ではなかったにしろ、完売だった。もっとも、客の大半は三宅のファンで、はたして今後、「歌舞伎のお客さん」になってくれるかは疑問だが、とりあえずチケットは売れた。

5月には「オフシアター歌舞伎」と銘打って、天王洲アイル・寺田倉庫と新宿・歌舞伎町の新宿FACEで、中村獅童と中村壱太郎が、荒川良々を加え、『女殺油地獄』を赤堀雅秋の脚本・演出で上演する。

6月には歌舞伎座で三谷幸喜の『風雲児たち』も予定されている。

獅童は8月には、京都・南座で初音ミクとのコラボで「超歌舞伎」を上演する。秋には菊之助が『風の谷のナウシカ』を歌舞伎にして上演するのも決まっている。

昨年は『NARUTO』、その前は『ワンピース』と人気コミックの歌舞伎化も興行的には成功した。

こういう「新しい試み」は、当然、若い役者が中心となる。

そして必ず、「新しい試みもいいけど、古典をしっかり勉強すべき」と、やんわりと批判される。そう言う人は、ベテランの大幹部役者たちを絶賛するわけだが、その大幹部がいつまでも役を次世代に渡さないから、若手は古典を演じる機会がないのである。