# 地方創生

「映画になった男」が語る逆転の発想。「過疎地にこそチャンスアリ」

人も企業も再生する地方オフィスの魅力
「地方創生」という言葉が唱えられたのは、2014年9月。当時はローカル・アベノミクスとも呼ばれ、経済政策の目玉のひとつとも言われたが、いつの間にか「働き方改革」にその座を取られ、すっかり影が薄くなった。
結局、予算をつけただけでは、その地域に人は来ないし、残らない。「地方には仕事がない、だから人も出ていくし、入ってこない」。それが定説だった。
しかしいま、経営者の視点から、その定説に異を唱え、「地方には仕事はある。人がいないだけ」「過疎地こそビジネスチャンスの宝庫」と言って注目されているキーパーソンがいる。
一連の活躍が書籍『本社は田舎にも限る』にまとめられ、映画『波乗りオフィスへようこそ』(2019年4月公開)にもなった男が語る言葉は、これからの「地方創生」そして「働き方改革」にもヒントになるのではないだろうか?

人材募集窮余の策がサテライト・オフィス開設

もともと私は、東京で社員6~7人のITベンチャー企業を経営していました。でも私のところのような零細企業には、エンジニアの求人募集広告を出しても、なかなか人が来てくれない。せっかく仕事が増えてきても働く人がいないのではどん詰まりです。

「なんとかしてくれ」と社員たちからも責められて、悩んだ末に人材募集のためにとった窮余の策が、徳島・美波町でのサテライト・オフィス開設でした。いまでこそサテライト・オフィスも各地に増えていますが、うちの会社が開設した2012年当時は、まだサテライト・オフィスがほとんどありませんでした。

なぜ、サテライト・オフィス開設を考えついたのか。

それは人材募集をかけるのに、会社のブランド力、待遇面などで勝負しようとしても、結局大企業には敵わないということはさんざんわかったので、別のやり方で勝負してみようと思ったからです。

そこで新しいワークスタイルの提案をしたのです。

 

美波町というのは、徳島県南西部の海沿いにある町です。ウミガメが毎年産卵のためにやってくるきれいな浜があり、関西圏の人には、海水浴やサーフィンをする場所としても知られています。山も近いので、山遊びや釣りも思う存分できる。

じつは私の生まれ故郷でもあるのですが、それが理由ではなく、いくつかの候補地のなかで、いろいろとアウトドアが楽しめる美波町がいちばん良いと思ったからです。

なにしろサテライト・オフィスの予定地からは、徒歩1分以内で海。車で15分も走れば、きれいな渓流もあります。たとえばサーフィン好きな人にとっては、「朝サーフィンをしてから出社、昼休み時間にもサーフィン、仕事が終わってからもサーフィンができる」というわけです。

じつは一方で、徳島県は、ケーブルテレビ普及率が89.8%(2017年3月末)と全国一位の自治体。さらに大都市圏に比べると、ネットを利用する人が圧倒的に少ないことからも高速通信。IT企業が仕事をするには何の問題もない環境が整っていました。

ブランド力でも待遇面でも勝負できないけれど、新しいワークスタイルの提案という形だったら勝負できるかもしれない。

謳い文句は「半X半IT」です。これは塩見直紀さんが提唱された有名な「半農半X」のもじり。わが社はIT企業なので仕事はIT関係。だからITは外せません。その代わり、もう半分の「X」にはそれぞれの人が何を入れてもらってもいい。サーフィンの好きな人は「サーフィン」、釣りの好きな人は「釣り」、山遊びの好きな人は「山遊び」。