大阪都構想ダブル選挙、激戦の裏に「選挙とSEO対策」の危うい関係

ネットで「都構想」と検索すると…
竹内 謙礼 プロフィール

露呈した「検索エンジンの穴」

2つ目の問題は「誰がこの戦略を考えたのか?」という点である。今回の反都構想のサイトはSEOの観点から見れば非常に優秀なサイトといえる。Googleの検索エンジンにヒットしやすいように文字数を増やし、サイトの構造を深くして、長文を飽きずに読ませるためにイラストや図を分かりやすく折り込ませるという手法は、コンサルタント的に「いい仕事しているなぁ」と素直に認めるところがある。

さらに調べてみると、このページを制作したのは2018年の3月だということが分かった。たった1年で公共性の高いキーワードで検索結果1位を奪取したのは見事としかいいようがない。加えて言うのなら「都構想」のウィキペディアよりも上に持ってきているので、SEOの知識と技術力は相当なものだと言ってもいい。

本来であれば「都構想」を掲げている大阪維新の会のホームページのほうがコンテンツとドメインの強さから上位表示されるべきだが、大阪維新の会そのものが新しい政党で、ドメインパワーが比較的弱いことを熟知した上で、選挙の争点となる「都構想」という検索キーワードで1位を取りに行ったのは、よほど腕のあるWEBマーケッターが背後にいると考えていい。

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ちなみに、大阪維新の会の都構想のページは3月22日現時点で「都構想」と検索しても2ページ目以降にはじき飛ばされており、検索結果の10位ぐらいをうろうろしているような状態である。しかも、途中でこの反維新のサイトの存在に気づいてリスティング広告を投下したようだが、検索結果に見劣りしてしまった感は否めない。この点から見ても今回のW選挙において、都構想に反対する大阪市議会議員の作戦通りと言ってもいいだろう。

 

知り合いのSEO専門のコンサルタントに、今回の反都構想のページを制作するとしたらどのくらいの予算がかかるのか聞いてみたところ「軽く100万円は超える」ということだった。

実際、このサイトを制作した自由民主党・市民クラブ大阪市議員団の政務活動費収支報告書の領収書の写しを確認したところ、この反都構想のサイトを制作した費用は173万1067円と判明。しかも請求書の明細には「SEO対策作業費」として12万円の支出と記載されているので、「都構想」のキーワードで意図的にこのサイトを上位表示させたことは明らかと言える。これらのお金は税金から投入されていると思うと、なかなか複雑な気持ちになってきてしまう。

何度も繰り返し述べていることだが、今回は話がややこしくなるので、都構想がいいとか、都構想が悪いとか、維新の会あるいは自民党がいいとか悪いとか、そこらへんの話は抜きにして考えている、

ただ、今後、このような優秀なSEO業者に投資できる政治家や政党が、検索結果で優位な立場になっていくことは、ネットの利用者にとったら少し怖い話だなぁと思ってしまうのが、私が覚えた“違和感”である。

今回の反都構想のサイトが選挙期間中に検索結果でトップに出現してしまったことは、選挙におけるネットの活用について真剣に考える機会に差し掛かった事例と言える。プロのSEO業者を選挙で活用する手法がまかり通れば、有権者を誘導したい情報を上位に表示して世論をコントロールすることができるようになるし、その逆で政治家が隠したい情報を検索結果から落とすこともできる。

しかし、現状、Googleの検索エンジンは政治に関する情報の正誤判定ができる状態ではない。医療や病気に関するサイトであれば、Googleのクローラーがキーワードを抽出して「これは間違った情報だな」と察知して、検索結果を下げる動きをしてくれる。

例えば、「腰痛 治る」のような医療系のキーワードに関しては、病院、医師のサイトでなければ「こんなキーワードを根拠のないサイトに使ってはいけない」とGoogle側が判断して、意図的に上位表示させない動きをしてくれる。へたをすればペナルティを与えて検索結果に表示させないこともある。

だが、今回のように政治に関してのサイトは、明確なキーワードが存在しておらず、偏った政治的情報を取り締まることができない。今回の反都構想のサイトが検索結果で上位に表示されてしまったことは、Googleの検索エンジンの”穴”を突かれてしまったと言える。

都構想は、大阪府民、大阪市民にとって生活に関わる重要な争点となる。誰が本当のことを言っているのか、自分たちでジャッジしていかなくてはいけないため、ネットで公開されている情報は重要な判断材料になる。しかし、誰がつくったのかが明確ではないようなサイトが検索結果の上位に意図的に表示されてしまうと、ネットの情報すら信頼できなくなる恐れがある。

政治とネットの活用に関しては、もっと有効的なガイドラインを作り、有権者に公平性のある情報を発信していく基盤を早急に整える必要があるのかもしれない。