大阪都構想ダブル選挙、激戦の裏に「選挙とSEO対策」の危うい関係

ネットで「都構想」と検索すると…
竹内 謙礼 プロフィール

例えば、大阪維新の会が同じように都構想について解説しているサイトを持っているが、「大阪維新の会」と全面に打ち出しているうえ、吉村市長や松井知事の顔写真が出ているので、閲覧者から見れば“これは都構想賛成派の意見だ”と容易にジャッジすることができる。このように情報というのは発信者が分かって、初めて公平な判断ができるものなのである。

*大阪維新の会サイトのキャプチャー

大阪維新の会(特設サイト)

だが、今回の都構想反対派のページはその真逆だと言わざるを得ない。まず、タイトルが「今さら聞けない『都構想』」として、公平性のあるサイトのように見せかけている。これだけ分かりやすく明確にコンテンツは作っているにもかかわらず、都構想に反対している団体が作ったサイトであることは明確に書かれていない。

明確に書かない理由は、おそらく都構想の反対派が作ったサイトと分かれば、記載している情報を信頼してもらえないという懸念があったのだろう。例えるのなら、阪神ファンが作ったサイトで、阪神の選手を高く評価していることが書かれていても、見ているほうは「どうせ阪神ファンの目線だろ」と思えて信じてくれないのと非常に状況はよく似ている。

情報の信頼性というのは発信者によって判断されるものであって、書かれている内容というのは二の次だというところがある。最後のコピーライトのところに団体名は記載しているものの、一般の人が見れば、公平性のある情報コンテンツだと思い込ませる必要があったと思われる。

 

「広告」ならばまだ分かるが…

これが、もし、バナー広告やリスティング広告によって誘導されるサイトであれば問題はないといってよい。“広告”なのだからお金を出した人の偏った意見が掲載されていて当然である。実際、選挙期間中に各政党がテレビコマーシャルで自身の政党のマニフェストを訴えていることと手法は同じである。

また、偏った意見だけではなく、都構想のメリットとデメリットを両方記載して、なおかつ中立性のある立場の人間が書くのであれば、コンテンツとして公平性が保たれているのでこちらもまったく問題はない。百歩譲って意図的にSEOで上位表示を狙っていないサイトを制作しているのであれば、大騒ぎするような話でもない。

しかし、今回の場合は、検索結果という公平性を最も保たなくてはいけない情報発信の場で、あたかも「これが公平な情報です」と配信して、なおかつ意図的に検索結果で1位を取りに行っている点である。

先ほどの例でいうなら、選挙期間中の政党のテレビコマーシャルなら問題ないが、公平性を保つ報道番組で、一方的にあるひとつの政党の意見を述べてしまうようなものである。公共性のある検索結果を選挙で利用してしまうのは、コンサルタントとして「ちょっと下品なやり方だよね」と眉をひそめてしまう。

もし、このやり方が「間違っていない」と政治家のみなさんが主張するのなら、それこそネット上は出所不明な主義主張、誹謗中傷だらけになってしまい、有権者の判断はさらに混乱を極めてしまうことになる。自分の住んでいる選挙区で同じような情報サイトが検索結果で上位に表示させられてしまったら、正直、有権者としてはあまり良い気分ではない。

今回のケースで思い返されるのは2016年にDeNAが犯したキュレーションサイト問題である。健康、医療系のまとめサイト「WELQ」が、間違った情報を意図的に検索で上位表示させることで、大きな社会問題となった。

今回の反都構想派が制作したサイトは、おそらく政治のプロが監修したサイトなので、大きく間違った情報が載っているわけではないと思われる。しかし、もし、書かれている内容が真実ではなく、有権者に誤解を招くような表現が含まれているのだとしたら、DeNAが犯したキュレーションサイト問題となんら変わらない話になってきてしまう。

実際、今回の反都構想派の制作したサイトにも、有権者の誤解を招きそうな表現がなかったわけではない。

例えば「今さら聞けない大阪都構想」のサイトでは、『「都構想」の本当の目的は、借金の少ない大阪市の税収を借金の多い大阪府に吸い上げる仕組み』と記載しているが、平成30年5月28日に行われた大阪市制度(特別区設置)協議会の第11回議事録を読み返してみると、大阪維新の会の横山英幸大阪府議会議員が、議会の中で大阪府の借金についての誤解を説明しており、「万にひとつも大阪府の借金を市民が肩代わりさせるような状況は発生しない」と明言している。

他にも「都構想における効果額がゼロ」や「特別区の住民が二重に税金を負担することになる」等、議事録や維新の会のホームページの論調と照らし合わせてみると、断言するにはやや危うい表現のものが多いように思える。

もちろん、選挙における政党や政治家の“意見”なので、それぞれの言い分はあるのは当然と言える。しかし、ここで問題になるのは、この反都構想派のサイトが、「誰が言っているのか?」が明確に記されていないことで、書かれている表現や文章内容が“誤解を招く”と判断されてしまうのである。