大阪府知事と大阪市長のW選が告知された3月21日のことだ。Googleで「都構想」と検索すると『今さら聞けない「大阪都構想」』というサイトが検索結果で1位に表示された。
クリックすると「大阪都構想について詳しく解説します」というキャッチコピー。
読みやすい大きな文字とイラストで、分かりやすく都構想について解説されている。
しかし、よくよく読むと内容は都構想への反対意見ばかりだ。「都構想の効果額はゼロ」「都構想は大阪府が大阪市民の税金を狙っている」「現在のサービスが大幅に削減される」等々ネガティブキャンペーンのオンパレード。
「誰がこのサイトを作ったんだ?」と思いスクロールしても制作主が分からない。そして最後のコピーライトにこう書かれていた。
『自由民主党・市民クラブ大阪市議員団』
なるほど、都構想に反対する大阪市議会議員が、Googleで「都構想」と調べた人たちに「都構想が実現すると大変なことになりますよ」とアピールするために、このサイトを作り、検索結果で1位に持ってきたのだろう。(4月4日の22時頃、「都構想」について客観的な解説をしているYahoo!ニュースの記事が新たに検索1位として表示されているのを確認した)
以前、知人の紹介で日本維新の会のお仕事を少しだけお手伝いしたことがある関係で、都構想についていろいろな意見があることは知っている。また、大阪府民でもなければ、大阪市民でもない千葉県民の私にとって「都構想は関係ない話だ」と思っているのも事実だ。
しかし、過去にも<言葉のプロが分析!選挙のキャッチコピー「巧い政党・ヘタな政党」>というタイトルの記事を寄稿したが、選挙における各政党の情報発信を考察している立場から見て、今回のSEOを利用して政治的目的を発信する手法には違和感を覚えてしまった。
「政治家が自分の主張をホームページでアピールして何が悪い」
そう思った人も多いかもしれないが、私が違和感を持ってしまったのは2つの理由がある。ここでは都構想が良いとか悪いとか、そういうことはひとまず置いておいて、選挙におけるSEOのあり方について、今一度、問題点を検証してみたいと思う。
ひとつは「公平性に欠いたサイトを意図的に検索結果で上位表示させてしまった」という点である。
Googleは検索品質評価ガイドラインでお金儲けや病気、将来の経済状況におけるコンテンツに関しては品質を守るよう定めている。この点に関してはSEOコンサルタントの鈴木謙一氏がブログで詳しく解説している。
・Google検索品質評価ガイドラインで新たに追加された“YMYL”とは(引用:海外SEO情報ブログ)
しかし、今回の反都構想のサイトは、このGoogleの定めたガイドラインを意識して作られていないように思われる。まあ、ガイドラインには法的罰則もなく、「ホームページを作る時はモラルを守りましょうね」という程度のものなので、目くじらを立てて大騒ぎすることではないかもしれない。だが、ホームページを作って検索で上位表示させるサイトとしては、あんまり歓迎すべきコンテンツではないことは確かである。
分かりやすく言えば、「お金儲けの方法を教えます」というサイトを作り、「副業」というキーワードで検索結果の上位を狙い、読んでいくうちに特定の情報商材を購入させる手法と類似している。
売り手にとって都合のいい情報で、なおかつ誤解を招くような情報を、公共性の高い検索結果で上位表示させることは、間違った情報を信じてしまった人を困窮させる恐れがあるので、「ホームページを作るときは、モラルは守りましょうね」というのが、先述したGoogleの定めたガイドラインの意図となる。
「いやいや、政党や政治家でも意見を主張しているサイトはたくさんあるでしょ」
そう思われた人もいるかもしれない。しかし、それが許されるのは政治家や政党の名前をはっきりと全面に打ち出して“これは〇〇の意見です”とアピールしているケースだと私は考える。ページを閲覧した一般消費者に対して「これはこの政治家の意見なんだ」と“明確に”理解させるサイトであれば、有権者に誤解を招くことはない。