2019.03.30

新書の企画会議に潜入してわかった、ベテラン編集者の「企画発想法」

女子東大院生が現代新書編集部を直撃⑤
現代新書編集部 プロフィール

ナナ 後者のような企画の立て方は、また違う頭の使い方が必要そうな気がします。ハジメさんは、どのように企画を考えているのですか?

ハジメ 翻訳の編集をしていた時期にマルコム・グラッドウェルというアメリカのコラムニストの本を何冊かつくったんだけど、彼は、一見関係ない二つのことをうまく組み合わせるのがすごく上手な人だった。

例えば、日本人や中国人の勤勉さは、稲作文化がもとにある、とか。

何かと何かをかけ合わせると面白いものができるんじゃないか……その手法に魅了されて、今も、企画の発想の元にすることが多い気がする。

ナナ 面白いです! 化学変化みたいなものが起きそうですよね。

『未来の年表』も、「年表」といえば普通は「過去」なのに、それを「未来」に当てはめるという、逆転の発想なのですよね。意表を突かれます。

企画会議は、タイトルやテーマを決めて終わり、ではなくて、内容をどう構成して、魅せるか、ということまでも考えないといけないんですね。

ヨネ マサくんはどう? 一番の若手として、思想にしても歴史にしてもいまの流行に敏感なんじゃない?

マサ そうですね。前提として、流行を押さえることは心がけています。こんなモノや人が話題になっている、というのを把握したうえで、それ以外の何かを考える。

ナナ 「それ以外」ですか?

マサ 同じ企画を立てても、二番煎じになっちゃうからね。さらにプラスで何か面白いことができないかな、と。

たとえば、ちょっと前に「ハンナ・アレント」ブームがあって、その前は「マイケル・サンデル」ブームがあったでしょ?

ナナ ありました!

マサ 哲学や思想って、難解で本も売れそうにないイメージがあるかもしれないけど、サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』はよく売れたし、哲学入門書として書かれたファンタジー小説『ソフィーの世界』みたいな大ベストセラーもある。

数年単位で哲学本が売れる波が来るから、「次にどういう波が来るかな、誰が注目されるかな……」って色々と仮説を立てながら企画を考えるのは楽しい。

著者がノッてくれるように

ハジメ 某思想系雑誌を経て、編集部に配属された新メンバーのイッツーくんはどう? イッツー・メソッドも開陳しないと!

イッツー 僕はこれまで雑誌ばかりを作ってきたので、書籍のように、一人の著者とワンテーマで走り抜ける、という作り方とは少し違うかもしれません。

僕が担当していた雑誌では、特集のテーマを決めて、実際にそのテーマで書いてくださる著者さんを10~20人くらい集めます。

そうすると、著者がノッてくれるような、面白いテーマを立てないといけないですよね。

ショウ その特集テーマはどのようにして決めるのですか?

イッツー やはり、打ち合わせやシンポジウムの会場で誰かと話した内容を企画につなげることが多いです。ふと自分で何か思いついたとしても、本当に面白いテーマかどうかということを、著者や読者の目線を入れながら、じっくり考えます。

ハジメ ちなみに、過去の特集の中で、会心の出来の特集、みたいなのはあった? 「コレは俺じゃないとできないぜ」、みたいな。

イッツー 会心の出来……かは分かりませんが、●●の特集は、作っていて本当に面白くて、終わってほしくない、とずっと思っていましたね。

ナナ そんなユニークなテーマの特集があったのですか!

イッツー 編集後記を書きながら、「ああ、いつまでもこの号の編集をしていたい!」と……。

ハジメ おお、カッコいい! 俺も言ってみたいセリフ。

イッツー それが売れるかどうか、というのは、また別問題なんですけど……。

マサ そうした雑誌の特集号は、われわれ新書編集者の役に立つんです。若い書き手も多いので、今はこんな人が売り出し中なんだ、ということが分かります。

ハジメ だんだん話が面白くなってきた! もっと聞いていたいんだけど、ここで一度、会社に戻らなくてはならない用事が。では、ちょいと失礼……。

ヨネ あ、ちょうど、マルさん、リュウさんが仕事を終えて来た! おつかれさまです。すみませ~ん、生ビール2杯……それと、赤ワインのボトル!

ナナ 今、みなさんが、どのように企画を発想するかという話をしていたのですけど、おふたりにもぜひ聞かせてください!

明日31日公開の後編へ続く!

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