2019.03.30

新書の企画会議に潜入してわかった、ベテラン編集者の「企画発想法」

女子東大院生が現代新書編集部を直撃⑤
現代新書編集部 プロフィール

ヒロシ 最初は、▲▲さんの方から「□□朝をテーマに書きたい」とご提案いただいていたんですけど、「それはちょっと狭いです」、とお伝えしたんですヨ。その後で、◆◆朝も合わせて、『××帝国』はどうですか、と聞いてみましタ。

ナナ なぜ「××帝国」にしようと思ったのですか?(ううむ、ネタバレになるので、文字にするときには、いろいろ伏せ字にしておかないと……)

ジュン 「××帝国」は世界史でも重要な位置を占める国ですが、このテーマの新書は、実はまだ1冊も出ていないんですよね。

昨年12月に刊行された中公新書の小笠原弘幸さんの『オスマン帝国』がよく売れていて、現代新書の鈴木菫さん『オスマン帝国』は刊行から20年経った今でも重版のかかるロングセラーですが、やはり「帝国」モノで1冊読み切り、というのは強いなという気がしていました。

その方は、日本で読める人がほとんどいない古代××語を読める方で、「他に誰が書けるんですか」と強く説得していたら、徐々にやる気を出してくださって、ご自身で企画書を書いてきてくださったんです。

ハジメ ヒロシさんが「お話になりません」なんて厳しいことを言って、著者の方がげんなり……というタイミングで、ジェントルなプリンス・ジュンが、「大丈夫ですか?」と優しく励ます……

二人で落とす「良い刑事と悪い刑事の共同取り調べ作戦」ですか!

書店は狩猟・採集の場である

ヒロシ 彼の専門的な学術書を本屋で見つけて、面白そうだと思って連絡を差し上げたのが、そもそもの始まりでしタ。

ショウ ということは、書店で見つけた本がきっかけだったということですね。

ヒロシ 私が企画を思いつくときは、だいたい書店。何かないかなって……狩猟・採集。

ヨネ 書店は狩猟・採集の場である! 同感です。ネットでは自分のほしいテーマばかりを探して視野が狭くなりがちだけど、書店を歩いているだけで、自分の気づかなかったようなテーマも即座に一覧できる。

書店はあらゆる情報や知識の宝庫で、まさしく「知恵の森」です。

イッツー ただ、書店にあるのは当然ですが、すでに刊行されている本ですよね。新たに本の企画を立てるとすると、「そこからのズラし方」が重要になると思います。

ヒロシ 面白そうな本を見つけても、そのテーマの本自体は、すでに存在している……だからそのズラしができるかどうかが、編集者の腕の見せ所なんですヨ。

ヨネ ヒロシさんがいつも言うように、新書の企画を作るためには、新書を読んでも仕方ない前回記事「現代新書の編集者が嫉妬した、他社の新書をこっそり明かします」参照)

つまり、「新書編集者は新書コーナーに行くな!」……なんか新書のタイトルになりそうだな。

(店員:お待たせしました~。トリッパーのトマト煮込みです)

ヒロシ たとえば、過去に自分が担当した作品から派生して、こっちのテーマも面白い、「よし、やりましょう」という軽いノリから、始まることもありますネ。

ジュン 本を1冊作ると、そのテーマについて、本を1冊読むよりもずっと深く詳しく知ることができるようになりますから、新たに「ここが鉱脈かも」と思うこともよくあります。

マサ 経験を積めば積むほど、いろいろな企画の糸口が見つかるということですか。ベテラン編集者ならではの企画の立て方だと思います。

何かと何かを掛け合わせる

ハジメ 僕は、週刊誌や月刊誌が長かったから、ヒロシさんやジュンさんのように、重厚な堅めの本を作ったことがほとんどないんです。

『未来の年表』の形式のように、10ページ、20ページでひとつのユニットになっていて、それらがいくつかまとまって、パラパラっとめくって頭に入る、という形式のものが自分の性に合っている。

(ハイボールジョッキを置いて)少し真面目な話をすると、新書では、一人の専門家にワンテーマで書いてもらう、というのが王道ではあるのだけど、そういう方法だけで部を運営するのは、少し難しくなってきたような気がしています。

一方では従来のような教養書。これは大事です。でも、もう一方では『未来の年表』のように、2~3時間くらいでさくっと読めて、人生の参考になるような本。僕は、新書にはこの両方があっていいと思う。

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