イラスト:渡辺恵美 デザイン:チカ

新書の企画会議に潜入してわかった、ベテラン編集者の「企画発想法」

女子東大院生が現代新書編集部を直撃⑤

ひょんなことから、現代新書の編集部に少しだけ出入りしている女子大学院生の私、人呼んでナナ。今月無事、大学院の修了証書を受け取り、4月からは社会人としての一歩を踏み出す。

現代新書編集部でのお手伝いもいよいよ卒業で、ちょっぴりさびしい。

だから最後に、メンバーが一堂に会する、ヒミツの企画会議と、それが終わった後の新メンバー歓迎会(という名の飲み会だけれど)に潜入させてもらった。

社会人として仕事をしていくうえでも、面白くてためになるお話がたくさんで……聞いているうちについつい、酔いも忘れて、のめり込んでしまいました。

〜 ナナから見た、編集部のキャラクター 〜
ハジメ アラフィフの愛され編集長。得意分野はノンフィクション。「新書の新しい突破口」を見出すべく邁進中
ヒロシ 哲学から少女漫画まで、幅広いジャンルに精通。オビやお土産のセンスは女子ウケ抜群。今年定年を迎える
ジュン 学術書一筋、温厚で気品溢れるジェントルマン。日本史に造詣が深く、「歴史のプリンス」の異名を持つ
リュウ 元フライデー編集長。最近は新書における「ビジネス書」ジャンルを模索中。昨年後半から組合活動で大忙し
マル 時事・社会系のタイトルで数々のヒットを飛ばす、現代新書のエース。編集長の座を狙っているという噂が……
ヨネ ユーモアセンスは編集部随一、シロクマさんのようなムードメーカー。しかし、その私生活は謎に包まれている
イッツー 某雑誌の編集部に勤務後、3月から現代新書に正式配属されたクール・ガイ。思想書へのパッションは計り知れない

マサ コミック部署より異動して1年半の新・プリンス。キラキラの目で誰もを魅了する。若者向け教養書に力を入れたい
ショウ ナナの後任をつとめる大学院生。膨大な読書量を誇る、本好き男子。マイブームは現代新書のタイトルから担当編集者を予想すること
イラスト:渡辺恵美

企画はどこで発想する?

(3月某日19時、会社近くの洋風居酒屋に、メンバーが集合した)

ハジメ 皆さん、今月の企画会議も、お疲れ様でした。まだ仕事中で来ていない人もいますが、まず乾杯しましょう。現代新書新メンバーになったイッツーくん、よろしく! 


イッツー

そして、ナナくんは東大院修了おめでとう。ナナくんの後任のショウくんも、これからよろしくね。では、カンパーイ! 

(一同、プハ~ッ!)

ハジメ 大学院生のショウくんは、本の企画会議に参加したのは人生初だったと思うけれど、どうだった?

ショウ どんな人に、何のテーマで書いてもらうか。それから、どのような目次や構成にするか。おすすめポイントや、オビのイメージまで……大変そうだな、と思いました。

会議ではみなさん、それぞれ企画を2~4本出されるのですね!

ナナ 今日の会議で出された企画も面白いものばかりでした。みなさんが、いつどのように、そんな企画を発案されるのか、ということをぜひ伺いたいです。

ヨネ ほお!(カプレーゼを頬張りながら)それはなかなか回答が難しいけど、言われてみれば、読者のみなさんには、すごく関心がある話題かも。

編集者の仕事について、大学生に話す機会も多いんだけど、そこで必ず訊かれるのが、「企画をどのようにして立てるのか?」「ネタをどこから探して持ってくるのか?」ということ。

先日のインターンシップでは、「居酒屋で知らない50代おじさんたちの会話を聞いてヒントを得る」という話をしましたが、すごくウケていましたよ。

ハジメ ええっ! それは某敏腕編集者のネタの受け売りじゃないか……自分の本当の手の内は隠しているなんて、ずるいなぁ。

ヨネ でも、その方法はたしかにあるなと思ったので……みなさんが企画をどう立てているのかということは、ぜひ私も知りたいです。

まずは、専門誌と人脈

ハジメ じゃあ、聞いてみよう! やはり、まずは「歴史のプリンス」こと、ジュンからではないでしょうか。ジュンさんは、よく勉強しているし、企画が一番、しっかりしていますから。

ジュン 本を読んで、考えたり、面白そうな著者さんを探したりすることは多いですね。

学術書もそうですし、最近は種類も減ってきてしまいましたが、大型書店に行けば、学術系雑誌もなるべく目次くらいは目を通すようにしています。

書籍編集の駆け出しの頃、企画会議に出ても、会話のなかに登場する著者の名前も、テーマも、わからないことだらけでした。

当時刊行されていた『AERAムック』の「宗教学がわかる」「歴史学がわかる」といったシリーズをそろえてみたり、『別冊宝島』の「現代思想」の特集号や『大航海』などを読んで、どんな研究者さんや著者さんがいるのか、ということを勉強していました。

ハジメ いわゆるネタ本、というやつですね。

ナナ (ふむふむ、ネタ本からまずは探すのか……)

ジュン ただ、今日の企画会議で提案した『××帝国』の著者、▲▲さんは、もともとご縁のあった方だったのです。

ヨネ もともとのご縁。ずばり、企画のネタはまず、人脈から。ちなみに、僕の担当した『老いる家 崩れる街』の著者・野澤千絵さんは、過去に現代新書を書いて頂いた著者さんからの紹介でした。

ジュン 長いご縁のある方も多いです。その▲▲さんは、以前に私が選書メチエに所属していた時に、何冊か本を書いていただいていた方で、ちょうど先日、ヒロシさんと一緒に会いに行ったんです。