山形激震…創業320年の百貨店を解任された社長の「悔悟と言い分」

市民に愛される「大沼」でなにが…?

全国で3番目の老舗

山形の「大沼」といえば、1700年、山形市の中心街「七日町」で、初代大沼八右衛門が創業した荒物屋をルーツとする百貨店である。松坂屋、三越に次ぐ全国で三番目の老舗。それだけに市民の愛着も深い。

その大沼で、3月22日、従業員らがつくった大沼投資組合株式会社が、経営権を取得したうえで社長を解任する騒動があった。

大沼は、昨年4月、事業再生支援会社のマイルストーン・ターンアラウンド・マネジメント(MTM・東京都千代田区)が、再生支援に名乗をあげ、経営再建に取り組み始めたばかり。株式を100%減資のうえでMTMが出資、20億円超の借入金は金融機関が債権放棄、創業家など全役員が退任し、しがらみを無くしての再スタートだけに、文字通り「ターンアラウンド」するかと思われた。

しかし、再生支援どころではなかった。3カ月後の7月には資金不足により、買掛金の一部で決済が遅れた。MTM自体の信用不安説も流れるなか、11月には大沼に融資する銀行などが会議をした際の資料が流出、出資金の還流が明らかとなった。

 

具体的には、6億円の出資計画のなかから3億円しか集められず、そこから1億1800万円が仮払金名目でMTMに支払われ、さらにMTMには経営指導料名目で5400万円、その他弁護士費用などに8700万円が流れ、残り“真水”の再生費用は、4100万円に過ぎなかった。

これでは、「MTM自身が火の車で、資金繰りのために、大沼という名門のハコを利用した」(地元金融関係者)と、指摘されても仕方がない。山形本店と米沢店を改装、服飾から食品に重心を移して収益力向上を目指す再生計画は、机上の空論でしかなかった。

そうしたMTMの実力不足に見切りをつけたように、大沼の新たな「受け皿」を模索する動きが昨秋から始まっていた。今回、大沼投資組合の経営権取得は、MTMが大沼株を担保に入れていたファイナンス会社が債権譲渡したことで行なわれたが、同組合はNN株式会社という社名で、昨年9月、大沼内に設立されていた。

代表は長沢光洋氏で、取締役に野又恒雄氏が就いていた(両氏とも3月14日に辞任)。長沢氏は、昨年9月まで大沼の社長を務めており、MTMの早瀬恵三社長が送り込んだ人物。その長沢氏に「反MTM」の動きがあるとして、早瀬氏は長沢氏を切り、自ら社長に就任した。この頃から、経営権をめぐる熾烈な水面下の攻防が繰り広げられていたようだ。都内でファンドを経営する野又氏は、新大沼で取締役に就いている。

早瀬氏は、争いに敗れた。「機密情報漏洩による攻撃」など、守勢に回らざるを得ない面もあったが、今年に入って信用不安説が何度も流され、2月20日には佐藤孝弘・山形市長らが記者会見を開き、「大沼で買い物をして支えていこう」と呼びかけるなど、深刻な事態に陥っていたのは事実である。

早瀬恵三氏

旧都銀で再生のリーダーとしてターンアラウンド長を勤め、05年にMTMを設立、14年の再生事業歴がある早瀬氏は、なぜ戦いに敗れたのか。解任の3日後、都内のMTM本社で早瀬氏を直撃した。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら