ヨシタケシンスケさん。デビューは40歳と遅咲きだが、押しも押されもせぬ、日本を代表する大人気絵本作家だ。2013年刊行のデビュー作『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)でMOE絵本屋さん大賞第1位を受賞すると、出版する絵本は軒並みヒット、デビュー10年を立たずして著作の累計は100万部を超えている。しかし、さぞかし晴れやかな方なのだろうと思ったら、実は「ネガティブ思考」に捕らわれているという。今をときめく人気作家と、「ネガティブな思考回路」の密接な関係を探った。

インタビュー・文/長谷川あや

ネガティブ満載な1冊

ヨシタケさんが、上梓した初めてのスケッチ解説エッセイ『思わず考えちゃう』。そこには、はっとするような、そして、超がつくくらいのネガティブな思考が散りばめられていた。「このこどく感はきっと何かの役に立つ。役に立たない訳ないじゃないか。こんなにモヤモヤしてるのに」「できないことをできないままにするのが仕事」等々……。

©ヨシタケ シンスケ『思わず考えちゃう』より

しかし、どうやらこのネガティブ思考こそが、ヨシタケさんの「作家性」を築いているようなのだ。

怒られないようにすごした幼少期

ヨシタケさんに子どもの頃について尋ねると、「大学に入るまで、つらいこともなかったけれど、面白いこともまったくありませんでした。楽しいと思ったのは、大学に入って、“表現する”喜びを知ってからです」と、予想の遥か上をいく、ネガティブな答えが帰ってきた。

「もともと気が弱いタイプで、クラスでも目立たない存在でした。僕は4人兄弟で、姉と妹が2人いるのですが、2つ上の姉が、なんでもできる天才だったんです。家で、僕が何かを言ったり、主張したりすると、場が荒れるんですよ(笑)。自分の意見を主張することはなんの利益にもならないと知りました」

そんな風に“場を荒立てないように”生きていた、子ども時代、ヨシタケさんが夢中になったのが工作だった。その理由も消極的だ。「なんでもできる姉が唯一、工作だけはやらなかったんです」。
工作がうまくできると、母親は褒めてくれた。ヨシタケさんはそれがうれしかった。

「いつからか、褒められたいという気持ちと、怒られたくないという気持ちが一緒になっていったんです。気づいたらどうしたら怒られないですむかばかりを考えるようになっていました」