日本企業の生産性を引き下げる「ご挨拶テロ」に気づいていますか

これは日本社会のムダの象徴だ
加谷 珪一 プロフィール

目的なく相手を訪問するのはビジネスでは御法度

生産性を決める要素を分解すると、①付加価値、②労働者数、③労働時間の3つになる。生産性は①の付加価値を労働投入量(この場合には②×③)で割って求められるので、生産性を上げるには、①付加価値を上げるか、②労働者数を減らすか、③労働時間を減らすのかの3つしかない。

もっとも効果的なのは付加価値を上げること、つまりたくさん稼ぐことだが、これはビジネスモデルにも関係してくる話なので、一朝一夕に状況を変えることはできない。一方、ひとつの作業に従事する労働者の数を減らしたり、業務のムダをなくして労働時間を減らすというやり方は、すぐにでも効果が得られる。

ところが日本企業の場合、このもっとも簡単な方法が実現できていない。

実現できていないどころか、多くの日本人社員は毎日がんばって仕事をしているとすら思っている。だがそのがんばりが利益に結びついていないのなら、それは、もはや仕事とは呼べないという事実に気付く必要がある。

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日本以外の国では、目的もないのに会社を訪問し、面談することは、相手の時間(つまりお金)を奪っていることと同じであり、激しく嫌悪される。筆者はこうした行為を「バイトテロ」にちなんで「ご挨拶テロ」と呼んでいる。

2000年前後に米国で発生したネット革命によって、シリコンバレーを中心に無数のIT企業が誕生した。こうした流れに遅れまいと多くの日本企業が現地に事務所を置いたり、日本からの出張を繰り返していたが、そこで繰り広げられていたのが、この「ご挨拶テロ」であった。

 

今度はアジアで同じ事を繰り返している

日本人社員が大挙してサンフランシスコを訪れ、同市からほど近いシリシコンバレーにあるIT企業を訪問しては、質問を繰り返すのだが、このようなことしてもグーグルやアップルのようなアイデアが出てくるわけはなく、当然のことながら先方企業に何のメリットもない。

現地調査と称する一連の日程を終了した日本人社員たちは、夜になると現地社員の案内でサンフランシスコ市内にある日本人向けのピアノバー(米国では日本人向けの夜のお店のことをピアノバーと呼ぶことが多い)で大騒ぎをして、日本に帰っていくだけである。これで潤ったのは、ピアノバーに務める日本人ホステスさんと、諸外国と比べてはるかに高額な運賃で知られる日本の航空会社だけだろう。

筆者も若い頃、こうしたビジネスに関わっており、米国企業から何度もクレームを付けられたことがあったので、この話は決して誇張ではない。その後、筆者はこの業界からは遠ざかっていたが、近年になってアジアでビジネスをしている日本人のブログやツイッターを通じて、日本企業が今度はアジア地域で同じような行動を繰り返していると知った。