本音を伝えないのは「保身」だった

筆者がこの作品を読んでまっ先に感じたのは、「働く人にとって、たくさんの共感ポイントがある」「これ、自分にもあてはまると感じる人も多いだろうな」ということだった。会社員と漫画家というWワークも、やれ「副業」だの、「好きを仕事に」だのと、声高に叫ばれている今の時流にぴったりと合致している。平日、淡々とした会社員生活を送っているからこそ、共感を呼ぶリアルな悩みや描写ができるのではないだろうか。

第5話「自分のズルさに気づく」では、嫌なことを言われても自分の「本音を伝えることができず、保身に走ってしまうというエピソードが登場する。

誰かから何か嫌なことを言われた時に、「自分が感じたことを相手に言えばいいじゃん」という風には思ってはいても、なかなか言えなかったんです。どうして言えないんだろうと考えると、「相手が傷つくんじゃないか」「あの空気を壊すのはなくない?」などと思ってしまうんですよね。

しかもそれが私の場合、相手のためではなくて「今までやったことがないから、そういうことを言ってしまう自分が怖い、何が保証がないとできな」と思っていることに気がつきました。「これは保身で、自分のズルさなんだ」と思ったんです。

©カマンベール☆はる坊 ワイドKC Kiss『わたし、いい人やめました』第5話より
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これから新しい生活や人間関係が始まる人は、「相手の前提条件を理解した上で、自分の意見を伝える」ということを実践するとよいのではないかと思います。たとえば、私は自分が悪いことをしたらすぐ謝る人間なんですけど、夫は絶対に謝らない。どうしてだろうと思っていたら、夫の実家に行ってわかったんです。

彼は住人が20人ぐらいしかいないような小さな村の出身。何かトラブルが起きた時も、「謝る」「筋を通す」よりもいい意味で「なあなあ」にする方が良しとしてきた文化みたいなんです。私は関東のよくある新興住宅地出身なので、もめ事やトラブルが起きてもなあなあでは済まない。このように、相手のバックグラウンドを理解した上で接するようにすると、攻め立てるような言い方もしなくなると思うんですよね。お前が間違っている!という言い方も避けられますし。向こうの考え方を尊重しつつ、「自分の考えはこうです」と伝える「伝え方」が大切だったんですね。

夫の例がまさにそうなんですが、「押し付ける」ではなく、自分の本心をまっすぐに伝えてみました。思わず涙も出てしまったのですが、そうしたら夫の方が号泣していて、怖がっていたよりもずっと気持ちが伝わったんです。それまではお互いずっと溜めて溜めて半年に一度ぐらい爆発して大ゲンカ、という感じだったのですが、今では仲良し期が続いています。

©カマンベール☆はる坊 ワイドKC  Kiss『わたし、いい人やめました』第2話より
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夫で予習をしたと漫画の中にも書きましたが、結局は私は相手にとって嫌でないようにしたいという言い訳のもとに、自分の本心と向き合っていなかったんですね。

自分の中での正しさを相手に押し付けないように、自分の気持ちを伝える」ということを常に意識していると、本音を押し殺してモヤモヤすることはなしに上手に本音を伝えられるようになることがわかったんです。結果として、人間関係もスムーズにいき、毎日を気持ち良く過ごせるのではないかと思います。