なぜ、島耕作は台湾に行ったのか?弘兼憲史さんに聞いた

「島耕作」台湾編刊行インタビュー 
野嶋 剛 プロフィール

変化する「台湾観」

野嶋:その九份では、「日台友好」と島耕作が書いたランタンを空に上げて台湾シリーズを締めくくっていますね。

九份の近くの線路でランタンを飛ばす弘兼さん(講談社)
(©弘兼憲史/講談社)

弘兼:実際に私もランタンを飛ばしましたよ。ランタンに島耕作の漫画を書いたら、後ろで人が集まってきて、「あ、島耕作だ」と注目されました(笑)。私の作品も知られているんだなあと感激しましたね。

台北でサインする弘兼さん(講談社)

いま、日本はアジアで四面楚歌といいますか、周辺の中国、北朝鮮、韓国どの国ともうまくいっていない。唯一、日本を悪く思っていないのが台湾です。だから、その台湾は大切にしたいですよね。

日本統治時代、霧社事件のような悲しい事件も起きましたが、一方で、日本人も頑張ってインフラを整備しました。日本語を話せる方も圧倒的に多い。それに台湾料理はめちゃめちゃ美味しい。

野嶋:作中では、台湾で有名なステーキハウスや日本も好きな台湾グルメの牛肉麺や小籠包など、いろいろ島耕作は台湾のグルメを堪能しているようですが、弘兼さんは台湾の食事では、何が好きですか。

弘兼:しじみの醤油漬けですね。しじみは肝臓にいい。そのしじみを、肝臓によくないお酒の肴にするところが面白いです(笑)。

 

野嶋:中国という国に対する考え方が、弘兼さんの中で変わっているようですね。島耕作が上海にいたときはもっと中国の将来への期待があったような気がします。

弘兼:確かに(私の見方が)変わりましたね。特に指導者が習近平さんになってからは。胡錦濤さんのときは日本への対応も若干改善の兆しがありましたが、習近平さんになって昔のように戻ってしまった。内部が不安定なので、敵をつくって日本を叩きをするようになってしまった。

野嶋:その分、台湾と日本は深く付き合うほうがいいと。

弘兼:作品のなかで、日本企業はいきなり中国に行くよりも、日本が信用できる台湾をクッションにして進出する方がいいことも描きました。

野嶋:中台関係についても、慎重な見方を島耕作はしていました。

弘兼:気持ちのうえでは台湾は中国と一体になってほしくない。日本とアメリカで台湾を守ってほしい。ただ、経済ではなんだかんだいっても中国は重要、台湾の国民も経済を優先する気持ちもあるでしょうから、我々から台湾はこうすべきだとは簡単には言えない。ただ、南シナ海は中国が取ろうとしているわけですから、次に中国が狙うのは東シナ海。台湾海峡には超えられない壁があってほしいですね。