なぜ、島耕作は台湾に行ったのか?弘兼憲史さんに聞いた

「島耕作」台湾編刊行インタビュー 

人気漫画シリーズ「会長 島耕作」台湾編が日本と台湾で同時に発売された。これまで、中国、ロシア、ブラジル、ミャンマーなどを訪れてきた島耕作が今回選んだ訪問先は台湾。中国との関係に揺れる台湾で、島耕作は何を考えたのか。

台湾では発売後、メディアが連日報道するなど高い注目を集めている。現地取材を通して考えた台湾と日本、中国が絡んだ東アジアの将来を、作者の弘兼憲史さんに語ってもらった。

 

中文版も100万部のベストセラー

野嶋:島耕作がTECOT会長として、今回、台湾を訪れています。その内容が、日本と台湾で、「会長 島耕作」第11巻として、3月22日に異例の日台同時発売となりました。今回、30年間を超える長期連載島耕作シリーズで初めて台湾に島耕作を行ってもらおうと思った理由は何でしょうか。

弘兼:実は、私はもともと、いま台湾の駐日大使をしている謝長廷さんが高雄市長だった頃から知り合いなのです。彼と一緒に高雄を歩いていたら、市民が続々と駆け寄ってきて彼に握手を求めるので驚きました。日本ではあまり見られない現象です。

彼や友人の立法委員(国会議員)である趙天麟さんからラブコールもあり、台湾では島耕作シリーズの中文版が100万部以上売れているので、昔から行きたいと思っていました。ちょうど東呉大学というところで講演があり、これは書かなきゃ、と思った次第です。

野嶋:この島耕作シリーズ、1983年に「課長島耕作」が始まり、「部長」「専務」「社長」などと続いて、いまは「会長」です。刊行総数4000万部を超えており、日本で有数のロングセラーとなっています。島耕作は、弘兼さんをモデルにしているのですか?

弘兼:島耕作は私と同じ1947年生まれ。山口県岩国市の出身という設定です。最初は自分が島耕作になるつもりはなく、生まれ年も少し違っていたのですが、あとから一緒にしました。自分に合わせれば忘れないと思ったのです。

野嶋:人格は似せているのですか?

弘兼:人格は違いますね。ただ、考え方は、もし、こういうシチュエーションだったら自分でも同じように判断するという風にしていますね。

野嶋:島耕作は出世するだけではなく、女性にモテモテで、サラリーマンの理想とも言われています。それも弘兼さんに似ているのでしょうか。

弘兼:それはないですね。そうありたいという願望はありますが(笑)。最初はこういう壮大な物語を書くなんて思っておらず、単なるオフィスラブ漫画だったのです。連載開始当時、日本はバブル経済の真っ只中。講談社の編集者に銀座に連れていってもらって、3軒も4軒もはしごしたりして、ホステスさんからも面白い話を聞けました。

野嶋:そういえば、確かに最初は不倫や恋愛の話が満載でしたね。

弘兼:島耕作がニューヨークに赴任したあたりから、本格的なビジネス漫画にしたくなりました。いろいろな国へ行くときは、私が昔いた松下電器(パナソニック)から、各地で取材協力を受けて、現地の人しかわからない面白い情報を漫画に込めていく書くことができました。

台湾でも同様です。台湾では、台湾経済のことのほか、台湾漁業も取り上げています。台湾もマグロ漁獲は世界2位です。台湾新幹線にも乗りましたね。観光地として有名な九份にも訪れました。

台湾新幹線に乗る島耕作(©弘兼憲史/講談社)