このままでは死者1000万人の「耐性菌」を倒すウイルス治療法とは

「ファージ」注入で感染症が消滅した!
ローラン・ニアガード

しかし、新たに市販される抗生物質はほとんどない。すでに大手製薬会社の多くは抗生物質研究を中止している。細菌にたちまち出し抜かれてしまう薬剤を開発しても、ほとんど利益につながらないからだ。

最近の報告書によれば、世界保健機構(WHO)がまとめた「スーパー耐性菌リスト」に含まれる耐性菌感染症の治療に向けて、研究が進められている従来型抗生物質は11しかなく、それらが有効だという保証もない。

さらに、感染リスクが特に高い人々はいるが(手術や、がんの化学療法を受ける人など)、国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士は、「抗生物質耐性菌は基本的にすべての人の問題だ」と語る。

アンソニー・ファウチアンソニー・ファウチ博士 Photo by Getty Images

「あらゆる指標が、この状況が今後数年でさらに悪化していくことを示しているように思われる」(ファウチ博士)

細菌の弱点を探せ!

ワシントン大学のプラディープ・シン博士は、抗生物質に代わる治療法を見つけることは、「感染性細菌の弱点が何かを解明することを意味する。細菌は感染症を引き起こすのに何を必要とするのだろうか」と説明している。

シン博士と、同僚であるワシントン大学の肺の専門家クリストファー・ゴス博士は、細菌の成長に不可欠な栄養素である鉄に注目している。

細菌は、鉄と、化学的に似た金属元素ガリウムの区別ができない場合があることがわかっている。ゴス博士によれば、そんな細菌にガリウムを与えると、他のシステムに栄養分が届かず、動かなくなるという。

ガリウム点滴がん患者にガリウム点滴が試みられたこともあった(1947年撮影) Photo by Getty Images

2件の小規模な研究で、シン博士らは、肺に耐性緑膿菌が感染しているが、症状は出ていない嚢胞性線維症患者を2人募った。この患者らは、5日間のガリウム製剤点滴を受けた。

その後の数週間で、2人の肺機能は改善し、次の段階の研究が計画されるまでになった。

この研究の被験者である、シンシナティ出身の24歳のトレ・ラローサさんは、「これはまさに、細菌を破壊する積極的な方法のように思えます」と語る。ラローサさんの姉妹は嚢胞性線維症で亡くなっており、彼自身の嚢胞性線維症は抑えられているものの、いつか急に耐性菌感染症が発症することを恐れている。

「防ぐ手立てはありません。抗生物質耐性菌はほとんど取り上げられていませんが、最も大きな問題の1つだと思います」

免疫系を刺激する

たとえば、膝関節置換手術の数週間前に、黄色ブドウ球菌の院内感染を防ぐため、医師が患者にワクチン接種をする。ファウチ博士はいつかそんな日がくると考えている。

耐性菌に関する大統領諮問会議に対して最近なされた説明によれば、さまざまな感染症を標的とする16種類の実験的なワクチンが開発中だという。