中堅・中小企業こそ働き方改革が必要だ!

私が中堅・中小企業こそ「働き方改革」が必要だと考える理由の一つは、時代は「採用氷河期」だからだ。

単に「売り手市場」であるだけではない。これから人口が減っていく中で、特に若年層の労働力確保の難易度は増す。業種や職種、企業規模、エリアによっては、事態はより深刻になる。

特に中堅・中小企業は大企業と比べて、新卒3年以内の離職率が高い。新卒の市場が厳しかった年に社会に出た若者は、求人が回復すると、転職を考える。大手企業の草刈場となる可能性がある。

もちろん、これは構造的な問題ではある。ただ、労働者にとって魅力的な環境を創らなければ、職場として選ばれないし、人材も定着しないのだ。だからこそ、中堅・中小企業も「働き方改革」に取り組むべきである。それは企業として生き残るための優先的な課題なのである。

とはいえ、単なる時短運動に矮小化してはいけない。そもそものビジネスのあり方を見直すこと、若者の争奪戦で疲弊するだけではなく多様な人材の活躍を応援すること、働く環境を良くすることが肝要だ。もちろんオフィスやITへの投資も必要だ。

ここでは、創意工夫と意志により、仕事のルールを変えた事例、多様な人材の活躍を推進した例、オフィス環境の改善に取り組んだ例の3つを紹介しよう。事例によっては稼ぎ方を変えていることも大きな特徴だ。ぜひ参考にして頂きたい。

顧客を選び、主導権を握る

長時間労働を是正するためにも、組織としてのミッション・ビジョン・バリューに沿った活動をするためにも、仕事の受け方にはルールを設けるべきだ。取引先や、社内の他部門の過剰な要求に振り回されてはいけない。サービスレベルやルールを見直すべきだ。

私は「予約のとれない小さな寿司屋モデル」「ドレスコードのある高級レストランモデル」さらには「偉そうな頑固店長による、行列のできるラーメン屋モデル」を提唱したい。

どういうことか? ポイントは、顧客を選ぶことである。仕事の量やルールなどの主導権を握るのである。

東京都武蔵野市にある「Gerbera Design」(旧・佐藤創作デザイン事務所ガーベラ)の事例を紹介しよう。何度かメディアで紹介されたので、ご存じの方もいるかもしれないが、同社では、社員の出社は週4日、金曜日は在宅勤務、10時出社6時半退社というルールを設定している。

この企業は「仕事と家庭の両立」を理解してくれる企業とのみ取引する。以前は年間100件の仕事をしてきたが、現在は数社に絞っている。デザイン業界でありがちなムリな要求、曖昧な要求を廃し、コミュニケーションを密にすることで、仕事のやり直しを防ぎ、一発OKの仕事を増やしている。

仕事の単価も上がった。顧客も紹介で増えていく。ブラック企業が多いと言われているデザイン事務所においては奇跡のホワイト企業と成り得ている。

もちろん、ひたすらシェアを増やしたい企業にとっては、当てはまらない例かもしれない。商品・サービスが弱いと、交渉権すら持てないだろう。ただ、クオリティを保つためにも、社員を守るためにも、顧客を選ぶこと、ルールをこちらから設定することは、中堅・中小企業として有効な施策だと言えるだろう。