年齢を基準にすべきではない
「もう30才を過ぎて、次のワールドカップは厳しいよ」
日本国内では、サッカー関係者の間でこうした話をしばしば耳にする。30代。それは一つの価値基準なのか。
例えば今回の親善試合で、30歳の香川真司(ベジクタシュ)が代表復帰したことに対し、疑問の声が上がった。
「南野、堂安、中島…せっかく若返りが進んでいたのに、時代に逆行しているのではないか?」
しかし、香川は移籍したトルコリーグの名門ベジクタシュで、改めて技術ポテンシャルの高さを誇示し、申し分ない活躍を見せている。

プロの世界では、「今」がすべてであるべきだろう。
年齢でものを語るのは、実に日本的な発想であり、本質を曖昧にする。悪しき慣習である――そう断言しても良い。
20歳の選手が4年後、必ずレベルアップしているかといえば、その保証はどこにもない。「ルーキー」「新星」と大きな期待を集めながら、ケガやメンタル面の弱さで伸び悩む選手も少なくない。若さへの”信仰”が、日本サッカー界では強すぎるのだ。
だから森保JAPANは、年齢を基準にするべきではない。
2010年W杯で優勝し、必ず優勝候補に名前が挙がるスペイン代表。彼らは、年齢で選手を判断していない。あくまでプロの視点で、「今」を見つめている。
EURO2016では、FWアリツ・アドゥリス(アスレティック・ビルバオ)が35歳で代表に復帰した。同年までたった一度のキャップ数しかなかったものの、活躍が認められた形で、そのまま大会メンバーにも選ばれている。
2015—16シーズン、アドゥリスはヨーロッパリーグで得点王を獲得しており、誰もが納得する選考だった。
また2017年、ロシアW杯出場を左右する大一番のイタリア戦では、当時35歳のダビド・ビジャ(現在はヴィッセル神戸)が代表に復帰している。交代で出場し、勝利に貢献。北米のMLS(メジャーリーグサッカー)でMVPを受賞したビジャは、その健在ぶりが再評価されたのだ。
「リーガよりもレベルの低いMLSで活躍しても、評価に値しない」
という向きもあった。しかしそうはならなかった。
〈健全な競争〉
それが代表の底流に流れていることが、チーム力につながる。
35歳に未来はない――その偏った考え方こそが、未来を切り捨てるのだ。