「LGBTは生産性がない」は生物学的にも間違っていることを示そう

それは研究によって否定されている
竹内 久美子 プロフィール

有力仮説が否定された

前置きが長くなったが、こうした前提に立った上で、私は杉田氏の「LGBTに生産性がない」という発言と、今年に入ってからの衆議院議員・平沢勝栄氏による「LGBTばかりでは国がつぶれる」という発言には反論したい。

繰り返しになるが、この話は、基本的に生物学的な話である。言葉遣いが冷たい印象になることもあるかもしれない。

LGB(Tはここでは除く)に「生物学的な生産性」がないというのは間違いなのである。

 

LGBに、もし生物学的な意味で「生産性がない」のなら、昔も今も、一定の割合を保ち続けることなどありえない。彼らには一見したところ生物学的生産性はない。しかし何らかの方法で自らが持つ、性的指向に関わる遺伝子を次の世代に残している、つまり生産性があるのである。他方で、その割合は一定であるわけだから、平沢氏の言うように「LGBTばかりになる」などということもありえないのだ。

こうして生物学の分野ではLGBは直接には子を残さないか、残しにくいのに、どうして増えもせず減りもせず、一定の割合を保つのかが、人々の最大の関心事であり、パラドックスであり続けていたのである(Bは異性愛者としての活動もするが、やはり「異性愛のみ」の者ほどには子を残さない)。

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このパラドックスについて真っ先に考えられたのは、こういう可能性だった。

彼らは血縁者の繁殖の手助けをしており、そういうルートを通じて自分の持つ、遺伝子、特にLやGやBに関する遺伝子を残しているのではないかーー。1970年代半ばに提出された、「ヘルパー仮説」である。

鳥のオスなどは、自分が育った巣から巣立ったものの、自分の縄張りを構えることができないことがある。そういう場合には親元に帰り、親の次の繁殖の手助けをし、自分の遺伝子を間接的に残そうとする。このような個体をヘルパーと呼び、人間の同性愛者もヘルパーとしての役割を果たしているのではないか、というのだ。

ヘルパー仮説は長らく有力仮説であり続けたのだが、なかなか本気で研究する者が現れず、きちんと検証されたのは2001年になってからである。そうしたところ、男性同性愛者は、血縁者に対し、疎遠であり、若い世代に対し、金銭を与える件についても、世話をやく件についても、あまり協力的ではないこと(そうならざるを得ない社会環境があること)が明らかになった。ヘルパー仮説は否定されたのである。

家系調査の結果わかったのは…

この、ある意味意外だった結果を受けてのことだろう。2004年になると、イタリア、パドヴァ大学のアンドレア・カンペリオ=キアーニらは原点に戻り、大規模な家系調査をした。

男性同性愛者(バイセクシャルを含む)、男性異性愛者、とその血縁者たちを含めた、総勢で4600人以上について、繁殖状況を調べたのだ。

するとまず、男性同性愛者にせよ、男性異性愛者にせよ、父方の繁殖状況に違いはない。

問題は母方で、男性同性愛者の母方の女であり、既に子を産み終わり、子の数が確定している、母、母方のオバ、祖母などである。彼女たちが、男性異性愛者の母方の女たちよりも、よく子を産んでいるのである。