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売り上げ20億円「室蘭発の町工場」社長、海外の市場で奮闘す

「株式会社キメラ」藤井徹也社長に聞く
夏目 幸明 プロフィール

人間何があるかわからない

海外で事業を行うと価値観の違いに驚かされます。例えば日本人は勤勉が美徳ですが、マレーシアにその感覚はありません。だから従業員は高い頻度で休みます。

休む権利があるのだから何が悪い? という感覚で、我々は「納期は約束なのだから」と説くのですがわかってもらえません。皆勤賞を与えてもやっぱり彼らは休みます。今も試行錯誤中ですが、日本人の価値観を伝えようとしても意味がないことだけはわかってきました。

 

まさか私が社長として海外で仕事するとは、人間何があるかわからないものです。でも、本気で、必死でやっています。でないと身にもつかず、楽しくもないですから。

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地元・室蘭への社会貢献を重視し、積極的に地元の人材を採用・育成しています。室蘭には日本製鋼所や新日鐵住金が立地しているので、理系の優秀な学校ができ、当社も優秀な社員を採用できています。今後は、室蘭の歴史に助けられるだけでなく、室蘭に貢献する側にまわりたいと思っています。

実は海外進出時も地元の恩恵を受けています。この場合の地元は「日本」。世界では「金型の技術を持っている国は日本とドイツだけ」と言われており、この「日本ブランド」は当社の最高のCMでした。だから当社も品質に妥協せず、より日本のブランド力を高めていきます。恩を受けたら返さなければずるいですからね。そして、こんな意識が社員を奮い立たせもするのです。

不良品への対応は、私自身で行っています。辛い仕事ですが、そこに会社の発展の芽が隠れているからです。

不良の原因は作業者、材料などさまざまです。仮に輸入材料が原因なら、すぐ材料の原産国に飛んで原因を究明し、報告書をまとめ、帰国したらその足で顧客企業に出向いて説明します。

実は、これこそが企業の財産になるのです。不良はあってはいけないもの。しかし失敗があったなら、それは財産に変えるしかないのです。

きっと人の成長も企業の発展も、努力や失敗を長く長く、そして真面目に積み重ねることによってもたらされるのでしょうね。(取材・文/夏目幸明)

藤井徹也/株式会社キメラ代表取締役社長
'63年、北海道生まれ。日本工学院専門学校音響工学科を卒業し、繊維問屋勤務を経て、'98年にアルバイトとしてキメラへ入社。同年に正社員になり、'06年に営業部長、'09年に工場長に昇格した。その後、'11年に代表取締役社長に就任し、以来現職。売り上げ約20億円、社員数120名の企業を率いる

『週刊現代』2019年4月6日号より