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いつから日本の「LCC競争」がこんなに激しくなったのか

未来の空旅はどう変わるか・その4
戸崎 肇 プロフィール

そして2018年、エアアジア・ジャパンを引き継いだバニラ・エアとピーチは統合される。ピーチのほうに一本化されることが発表され、現在その作業が進められている。

その一方でJALは、オーストラリアのカンタス航空系のLCCであるジェットスター・ジャパンと組むことになった。経営再建の途上ではあったものの、潜在市場をみすみすANAに明け渡すことには抵抗があったものと考えられる。

同じアライアンスに属するカンタス航空系のLCCであることにも、安全管理面などで一定の安心感を得ることができたこともあるだろう。

日本でも今や熟成期

こうして2012年には、3月にピーチが、7月にジェットスター・ジャパンが、そして8月にエアアジア・ジャパンが国内線の運航を開始した。

このエポック・メイキングな2012年を「LCC元年」と呼んでいる。なお、ジェットスターとエアアジアは成田空港をベースとした。

これによって日本の空が大きなインパクトを受けたことは間違いない。1998年のスカイマークやエアドゥの参入によって若干の運賃の低下は見られたが、その影響は極めて限定的なものであった。

 

しかし、今回は違った。たとえば3万円近くもかかっていた東京―福岡の片道旅行が、たった5000円程度で行えるようになったのだ。

東京―札幌、東京―沖縄も同じである。

東京での乗降場所は羽田空港ではなく成田空港ではあったが、時間的に余裕のある旅客にとってはそれほど大きなハンディにはならなかった(ただし、連載3回目で述べたように、成田空港の夜間の運用時間の制限により最終便がキャンセルになるといったリスクはあった)。

航空利用による国内旅行が安価に、気軽に行えるようになったのだ。時間的な余裕が許容されるなら、ビジネスにおいてもコスト削減につながるものとなった。

2014年にはJAL・ANA系とは違う初の独立した外資を母体とする春秋航空日本が国内線に就航した。またエアアジアは、今度は楽天などと組みなおし、名古屋を拠点とした国内線を新たにスタートさせた。

日本でも今やLCCは熟成期に入ってきている。

その後、各社は国際線にも進出し、海外のLCCとの競合関係は徐々に強まりつつある。LCC専用といっていい成田空港の第3ターミナルは、インバウンドの増加もあって、大変な賑わいを見せている(これに伴う問題性については、空港を取り扱う回で論じたい)。

そして中長距離路線へ

海外においても、日本においても、LCC間の競争が激しくなると、LCCは従来のビジネスモデルからの脱却、転換が求められるようになる。

LCCは中長距離市場へ(photo by iStock)

短距離線市場でのLCCの競争が飽和状態に達しつつあるため、中長距離市場に活路を見出すLCCが出てきた。JALが現在、新たに設立しようとしているのも、中距離LCCだ。

FSCとの競争において運賃面での優位性は当然だが、長時間乗るとなると、それなりの機内環境を整備する必要も出てくるだろう。

また、マイレージによって上級会員となり、ラウンジサービスの提供などによってすでに囲い込まれているビジネス層を切り崩すのは至難のわざだろう。新たな需要層の掘り起こしがどこまで果たせるかに成功はかかってくる。

この他にも、座席指定などの付加的サービスの無料での実施なども行われるようになってきている。

LCCによる競争激化は利用者にとってはもちろん望ましいところだが、過激になりすぎて、安全面での対策だけはおろそかにならないよう、利用者も関心を持って見守る必要がある。

次回からは、LCCの攻勢にFSCがどのようなスタンスをとっているかをみていきたい。