大人の発達障害、コミュニケーション問題はどう回避できるか

「視覚化」と「言わざる」がコツ
からだとこころ編集部 プロフィール

頭に入れて残すには、視覚化せよ

書かれた言葉を理解して、覚えることは、むしろ得意であることが多いのですから、こうした特性をうまく活用するのが重要な対処法です。

職場などでは、仕事の指示や決定事項は、必ずメモ帳やノートを持って、聞いたことをその場でメモするようにします。

メモは、場所、日時、数量、期限、名前など、要点をもらさず書き取ります。

勇気はいりますが、スピードに追いつけないときは、「すみません、ちょっとお待ちください」といって(「すみません」を忘れずに!)、相手にブレーキをかけてでもメモを取りましょう。

相手の話がすんだら、確認も忘れずに。「○○の書類は、×月×日までにやって、△△さんに渡す、ということでよろしいですね?」などと、読み上げるとよいでしょう。

メモを見れば、何の書類か、いつまでにやるのか、誰に持っていくのか、迷うことはありません。文字にするだけでなく、図やフローチャートにするのも有効です。

【図】メモをとる
  視覚化の最大のポイントは、「メモをとる」こと。人からは、電話でなくメールなど「見ることのできるもの」で伝えてもらうようにする

気心の知れた相手には、さらに突っ込んだ方法も

相手が気心の知れた人、上司でも比較的親しい人、理解のある人ならば、ポイントのメモを渡してもらえるよう、あらかじめ周囲に頼んでおく、というのもよいでしょう。

さらに、スマートフォンにあるメモや録音、カレンダーやスケジュール管理のアプリを活用するのも良い方法です。

ただし! 上司が話しているときに、いきなりスマホを出していじりはじめると、「なんだ、君は!」となりかねません。「すみません、ちょっとこれでメモをとらせてください」と、必ずひとこと断って、なおかつそれが許してもらえる相手限定にしましょう。

【イラスト】スマホ・アプリの活用
  スマホ・アプリの活用もよい方法! 使う時はひとこと断るのを忘れずに illustration by iStock

雑談、仲間内での会話は、聞き役で

さて、仕事の視覚化で、職場でのトラブルは避けられそうですが、打ち解けた場ではどうしましょう? 

大人の世界では、言ってよいことと悪いことがあります。それがよくわからない、という人や、そのこと自体は知っているけれど、その境界がわからない人もいます。悪意どころか、好意や気の利いたことを言うつもりだった場合もあることでしょう。

ところが、それが余計なひと言になってしまうこともあります。

まずは、失言や失敗をしたとき、なぜ失敗したか、何がまずかったのかを考えてみましょう。そして、自分にはこういう傾向がある、ということを自覚して、同じ失敗を繰り返さないようにしましょう。

  好意や気の利いた言葉が命取り!? 何がまずかったのかを考えてみよう illustration by iStock

「しゃべらない」勇気も必要!?

コミュニケーションの問題は人間関係に影響します。うまいことを言わなくちゃ、なんて、もう、やめてしまいましょう。

「そうなの!」「へー」「そうなんだ!」と言っているだけでも、けっこう場は持ちますし、それも気重なら、ニコニコしているだけでもなんとかなります。まずは、じっと「言わざる」です。

【写真】聞き役に徹する
  聞き役に徹する方が人間関係をうまく築ける?! photo by iStock

とは言え、相手と1対1の時など、まったくしゃべらないというわけにもいかないでしょう。世の中で通用しているマナーの例を挙げてみますので、人と話をする時のテクニックとして使えるようになると、余計なトラブルを防げるようになります。

会話マナーの例

  • 人と話すときは相手の目を見る。ただし、じっと見つづけないで、ときどき目をそらす
  • 笑顔で話そう。笑うのではなく、口元を少しゆるめる感じで
  • 自分だけ一方的に話さない。相手の話も聞こう
  • 仕事を断るときなどは「すみませんが」、飲み会を断るときなどは「残念ですが」の言葉を付け足すことを忘れずに

思ったことを言わないなんて……、と思うかもしれませんが、より良い人間関係を築いて、それを維持するという大きな目標のためには、「しゃべらない」「話さない」という勇気をもつことも、時には必要だといえるのではないでしょうか。

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