大人の発達障害、コミュニケーション問題はどう回避できるか

「視覚化」と「言わざる」がコツ
からだとこころ編集部 プロフィール

あれって何? 口頭での指示がわからない

話し言葉の理解が困難
→電話の受けこたえが苦手、口頭での指示が理解しづらい、「あれ」「これ」などの指示語が何を示しているのかわかりづらい

「さっき言った、例の書類、作ったら○○部にちゃんと送っておいてよ。書式は適当でいいから」

(さっき……いつだっけ?)

(例の……どれだ?)

(ちゃんと送らなきゃ。あ、書き方は適当でいいのか)

職場では口頭で指示されたり、やり取りのニュアンスで程度を求められたりすることが結構あります。しかし、自閉スペクトラム症の人では、話し言葉をとらえるのが苦手なため、問題が生じます。

【写真】職場では口頭で指示される場面も多い
  職場では口頭で指示される場面も多い photo by iStock

会話では、「ちゃんと」「適当」と、程度を言外に含ませる言い方が頻出しますが、それがどの程度なのかわかりません。また、言葉を字義どおりに受け取るため、含みやあいまいな表現は理解できません。

話し言葉が苦手だと、どうなる?

先輩から微妙なニュアンスの指示を受けた
→表現をとりちがえて、失敗してしまった
以前の話の続きのメールを受け取った
→文意を読み違え、とんちんかんな返信をしてしまった
電話で、取引先からの問い合わせを受ける
→先方の言っていることを理解するのが難しくて、やり取りがぎこちなくなってしまった
好意を寄せる人から話しかけられた
→雑談や話のキャッチボールができず、仲良くなれない

なぜコミュニケーションがとれないのか?

通常、話し言葉は音声として脳に入り、言語をつかさどる部位で処理し、一時的に記憶して行動を起こします。しかし、自閉スペクトラム症では、その一連の機能がうまくいかないため、正確な理解が困難です。

ただし、文字情報の入力・処理は問題ありません。上記の問題に、ご自身も身に覚えがある人の中には「子どものころ、勉強はよくできた」という人も多いのではないでしょうか? 自閉スペクトラム症では、教科書はよく理解できるし、演繹思考や暗記も得意なこともあって、成績は優秀なことが多いのです。

表情、語調、まなざし…会話の空気がわからない

言葉以外のメッセージ(メタメッセージ)が受け取れない
→相手の表情を読み取り損ねる、皮肉や冗談などを真に受ける、など

話し言葉には、表情やまなざし、声音(音調)、しぐさなど、言葉以外のさまざまなメッセージが加わっていて、全体として意図や気持ちが伝わります。こうした言葉以外のメッセージを「メタメッセージ」といいます。実際のコミュニケ―ションでは、伝えることの80%がメタメッセージによる、とも言われます。

【図】コミニケーションにおけるメタメッセージ
  実際のコミュニケーションでは言葉によって20%が伝えられ、メタメッセージによって80%が伝えられるという

しかし、自閉スペクトラム症では、このメタメッセージの理解ができず、また自分もメタメッセージを付け加えることができません。

メタメッセージが読み取れない・使えないとどうなる?

もうこの話は切り上げたいという雰囲気になっていた
→気付かずに一方的にしゃべってしまう
異性に告白された
→相手の感情に反した反応をして、傷つけてしまう
自分のことを冗談めいて他人に紹介された
→言葉通りに受け取って、紹介してくれた人に反感を覚える
仲間内でのデリケートな話題を、あえてぼかした表現で会話していた
→ありのままに話して、ひんしゅくを買ってしまう
【写真】ひんしゅくを買う
  仲間からひんしゅくを買ってしまうことも photo by iStock

このメタメッセージが読み取れない、使えないということのために、人間関係が構築できないという人は少なくありません。