あれから5年…ウクライナ危機を「他人事」と思ってはいけない

もしも、は日本でも起こりうる
真野 森作 プロフィール

日本にも無関係ではない

ロシアによるクリミア編入は日本にとっても二つの意味で無関係ではない。

一つ目は核兵器という視点だ。ソ連時代、その一部であったウクライナにも核兵器が配備されていた。ソ連崩壊後も大量の核が残され、ウクライナは自動的に米露に次ぐ世界第3位の核保有国となっていたのだ。核拡散を防ぎたい米国などとの交渉の末、ウクライナは核の放棄を決める。代わりに米国、英国、ロシアから自国の領土保全と安全保障を約束された。1994年の「ブダペスト覚書」がそれである。

だが、この国際約束の当事国であるロシアによってクリミア半島は奪われた。核を手放した国が核大国に領土を奪取されたのである。プーチン氏は編入1年後の2015年3月、当時を回想して「核兵器の準備はできていた」と語った。

 

この現実を見れば、北朝鮮は核兵器を決して手放すことはないだろうと理解できる。日本にとっての核の脅威は、ロシアの暴挙によって強固になったと考えることも可能だ。

クリミアを訪れるプーチン大統領 Photo by GettyImages

クリミア編入が日本に与えたもう一つの影響は、日露両政府間で交渉が続く北方領土問題の将来に関係する。プーチン氏によるクリミア編入宣言の直前に、その重大な影響に言及していた日本人専門家がいる。

元外務省主任分析官としてロシアに精通する佐藤優氏である。佐藤氏は、クリミアでの住民投票実施3日前の毎日新聞夕刊(2014年3月13日付)の長文インタビュー記事の中で次のように語っている。

《ロシアは「自国の死活的利益に関わる問題が生じた場合、近隣国の主権は制限されることがある」と主張、今回クリミアに介入しているのは「クリミアのロシア系住民を保護する」との名目です。その論理に従ってクリミアが編入されるなら、仮に安倍政権とプーチン政権との間で北方領土問題が「解決」したとしても、何の意味もないことになる。

なぜなら返還された領土に残ったロシア系住民が「日本のやり方に不満がある」などとロシア政府に訴えた場合、ロシアは住民保護を名目に軍を介入させてくると見なければならないからです。国際法や国連憲章に違反して領土を拡大する国とは、どんな約束を交わしてもそれが履行される保証なんてないんです》

まさに慧眼であり、筆者もこの見方に賛成である。安倍晋三首相は自身の任期中にプーチン氏との間で北方領土問題を解決しようと取り組んでいるが、仮に島の一部が返ってきてもそこは「日本のクリミア」となってしまうのだ。将来、ロシアが奪還しても不思議ではない。プーチン政権のロシアは2014年春を境にそういう国になってしまったのである。これがウクライナ危機後の現実だ。

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