『いだてん』は落語の知識を持って観ると、こんなに面白くなる

「遊び」がこんなにあるんです
堀井 憲一郎 プロフィール

ちなみにこの5話、永山絢斗演じる野口選手(金栗と同じ高師の選手)が、マラソンで遅れだして、腹を押さえて「腹が、、、、」と言うんで、腹が痛いんだろうかと心配して見てると「減った」と叫んだのは、落語『浮世床』での半公のセリフの流用です(たぶん)。

すげえ細かいけど、ドラマ見ながら、おいおいおい、と声をあげてしまった。そういう遊びが入っている(そうおもって見るとマラソンのゴールを待つ永井道明が「将棋でも指しますか」といったのもひょっとして『持参金』からか、と疑ってしまった)。

 

満州で演じた「志ん生の富久」が絶品だったというのが親の遺言だと弟子の五りんに言われて、志ん生が「覚えてねえなあ、それは圓生じゃないのか」と答えるのは、満州には二人で行ったからである。満州でのこの二人のエピソードもいろいろある。

神木隆之介の演じる「五りん」というのは架空のキャラのようだ。まあ、あの時代にあそこまであからさまな態度では弟子は勤まらないでしょう。

その兄弟子、荒川良々が演じる落語家は、むかし家今松と名乗っていたから、そうだとすると六代今松で、後年の古今亭円菊である。円菊は、師匠の志ん生を負ぶって運んだ噺をよくしていた。晩年の高座で何度か聞いた。この円菊の弟子の古今亭菊之丞が「落語指導」でクレジットされていて、それを見てるだけで嬉しくなってしまう。

小泉今日子演じる志ん生の長女さんは、新宿末廣亭の12月28日の夜席、当代のむかし家今松(七代)の「芝浜」を毎年聞きにきていて、周囲の人たちに挨拶してるのを何度も見た(私が見たんだから、わりと最近の話です)。

また志ん生の妻・りんを、志ん生の孫にあたる池波志乃が演じてるのを見て、これもほっこり嬉しくなった。たしか1980年代にも同じ役を演じていたはずで、と調べると1983年の『おりんさん』で、フジテレビの昼ドラですね、飛び飛びに見てました、志ん生は中村嘉津雄でしたね。あれから36年経って、池波志乃がまたおりんさんを演じていて、見てるだけでニコニコしてきてしまう。

とりあえず大河ドラマ『いだてん』の前半の落語に関するエピソードについて、目につくところで解説してみました。まだまだ落語の遊びを入れてって欲しいと個人的には強く願っています。

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