「なぜ太陽周期は11年?」400年続く「謎」に千葉大学から王手!

ガリレオ以来誰も解けなかったが──!
サイエンスリポート プロフィール

そこで音速だけを遅くしても、その他の現象についてはまったく同じ結果を得ることができる方法を開発し、太陽の中心から96%までの部分を計算した。その結果として、2016年、太陽の複雑な磁場生成メカニズムを解く大きな成果につながったのである(2016年3月25日のプレスリリースはこちら。99%までの計算も別に達成)

堀田英之千葉大学では週1回、物理学の講義を担当する。「学生たちに物理の基本を教えるのは楽しい」と堀田英之特任助教は語る

木を見て、森を再現する、高解像度の威力

堀田特任助教らの太陽の変動を再現する計算は世界最高解像度を持ち、そのシミュレーションは、見た目にも衛星画像かと見紛うほど高精細で鮮やかだ。

まず中心部で渦巻きながら大きな塊の磁場が形成されていき、「自転の影響で働くコリオリ力がかかり、ちょうどスイカのような縦縞が現れます」。そして表面ではとても小さな熱対流になる。

「内部から表面近くまで、一気に再現できたのはこの計算が初めて」という。

「高解像度にしていくと、小さな渦がたくさん作られて、磁場を壊そうとします。たとえば台風は一方向で回転するけれども、お風呂の水を抜く時は同じ向きに回転するとは限らないですよね? つまり大きな渦だと自転によって制限を受け、みんな同じような動きをするために大規模な磁場が作られるのです。

ところが高解像度計算で生まれた小さな渦は、自転の影響を受けずみんな勝手に動くので、大きな磁場をぐちゃぐちゃに壊してしまう」

このため、低解像度計算で見えていた大きな渦が、いったん再現できなくなったという。

「太陽はレイノルズ数100億のサラサラの天体なので、解像度を上げれば上げるほど現実に近づくはず」と、堀田特任助教。そこで、誰も試したことがないような高解像度にしたところ、再び大きな磁場が復活した。

「小スケールの磁場は、次々と非常に大きなエネルギーへと成長していき、しまいにはお互いが絡み付いて動けなくなって、大きな流れしか許されなくなっていく……という現象が起きることが分かりました」

この新しい理解をもとに、堀田特任助教は太陽表面に至る、残りの1%の解明を続けている。

もしも太陽における11年周期の謎が解けたら、磁気流体力学が一歩前進し、太陽への理解もいっそう深まるだろう。だが、それだけではない。

「現在ではたくさんの恒星が観測されています。そして多くの恒星で、太陽によく似た5〜数十年ぐらいの周期があることがわかっています。太陽の11年周期が解明できると、これを他の恒星に応用できる可能性が高いのです」

太陽あと1%! Photo by Michael Probst / AP
堀田英之答えてくれた人:堀田英之 特任助教(千葉大学)
2009年東京大学卒、同大学院、研究員等を経て、2015年より現職。博士(理学)。葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」のようなパターンを見せるケルビンヘルムホルツ不安定性のシミュレーションを見て、初期条件を与えて方程式を解くと絵が出てくるしくみに魅せられ、研究者を志す。学生時代の研究を発展させた太陽活動のシミュレーションで、2016年、太陽の複雑な磁場生成メカニズムを世界で初めて解明する論文を米科学誌「サイエンス」に発表。太陽はなぜ11年周期を持っているのか、太陽物理学最大の謎に挑む。

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学際研究「オーロラ4Dプロジェクト(2015〜2017年)」ホームページはこちら

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