(聞き手:池谷瑠絵 特記外の写真:河野俊之 「サイエンスリポート」より転載)
1610年、ガリレオが自ら作った望遠鏡で黒点の観察を始めて以来、少なくとも400余年にわたって人類は太陽を観察してきたが、これらのデータからわかるのは、「太陽の変動には明らかにパターンがある」ということだ。
ガリレオ自身も、自らが記した克明な黒点の記録から太陽の自転運動を推論したが、およそ27日で一回転する自転のほかに、太陽活動が活発と不活発を繰り返す、約11年の周期が知られている。
太陽緯度を縦軸に、時間を横軸にとって黒点の出現をグラフに表すと、約11年ごとに、ちょうど蝶のような形をしたパターンがくっきりと現れるのである。なぜ11年なのか?
明らかな規則性があるにもかかわらず、そのメカニズムは今も明らかになっていないのだ──。

黒点では何が起こっているのか
太陽の表面には、その活動が活発な時、黒点がたくさん現れる。
黒点は必ずS極・N極の2つひと組で出現し、太陽から発せられる光を観測することによって、黒点が強い磁場を形成しているのを確かめることができる。
「太陽は中心部で核融合が起こり、そこからエネルギーを放っています」というのは、千葉大学の堀田英之特任助教だ。
生成されたエネルギーは、輻射による熱輸送によって、太陽の中心から太陽半径の20〜70%にある放射層の中を約20万年もかけて運ばれ、ついにその外側を覆う対流層へ到達する。
「対流層は盛んに熱対流が起こり、ボコボコ湧いているような状態です。このうち磁場が強いために熱対流の流れが止められ、冷たくなっている部分が黒点です」
黒点は太陽活動が盛んな領域なのに、温度が低く、暗く見えるのはこのためだ。
黒点のS極とN極は、磁力線によって結ばれており、その大きな磁気エネルギーが熱エネルギーや運動エネルギーに変換されると、爆発の炎を噴き上げるような「フレア」が放たれる。太陽フレアは、大規模な場合、水素爆弾1億個ぶんにも相当する爆発現象であり、これが地球に到達し、オーロラを発生させる原因にもなっている。
また、太陽も地球の南極・北極にあたる極磁場を持ち、地球や他の多くの天体と同じように自転によってダイナモ(発電装置)を構成しているが、太陽では11年周期でこのS極とN極が反転する。
「しかしなぜ11年周期なのか、その過程はまだ分かっていません。太陽物理学最古で最大の問題と言えるでしょう」

太陽の中身を計算で再現する
そもそも太陽は水素とヘリウムでできており、対流層では、それらの陽子と電子がバラバラになった「プラズマ」と呼ばれる気体の状態になっている。巨大な磁場のエネルギーが開放されて熱エネルギーや運動エネルギーになったり、その逆の過程もあるという。
「結果としてすごくカオス的な状況なのですが、最終的にはかなり規則正しい約11年周期を実現しています。ということは、この乱流をきちんと理解すれば、11年周期が理解できるはず」と堀田特任助教は言う。