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SXSWで見えてきたこと

これからの情報社会をどう構想するのか

すっかりIT業界の風物詩の一つとなったイノベーションの祭典South by Southwest(SXSW)だが、今年もテキサス州オースティンで3月8日から3月17日まで開催された。

今年の隠れた目玉は名だたる政治家の登壇で、その中には民主党の大統領候補者であるエリザベス・ウォーレン、エイミー・クロブシャー、ピート・ブッティジッジ、ジョン・ヒッケンルーパー、フリアン・カストロも含まれていた。

特に、かつてテキサス大学で教鞭を執ったこともあり、SXSWが開催されるオースティンとも縁の深いエリザベス・ウォーレンは、SXSW2019の開催日である3月8日に合わせて、大統領選に向けた彼女の「テックポリシー」を記した“Here’s how we can break up Big Tech”という施策をウェブ上で公開していた。

タイトルこそ「これが私たちの考えるビッグ・テックの分割方法」だが、公開されたウェブページの冒頭に“It’s time for break up Amazon, Google and Facebook”とあるように、具体的にはAmazonとGoogle、そしてFacebookを狙い撃ちしたものだった。

この3社は、あまりにも巨大になりすぎて、他の企業やスタートアップから競争の機会を奪い、スモールビジネスを圧迫し、イノベーションを抑圧している、だから大統領になった暁には、これら巨大テック企業の分割を実施し、再び活力のあるテックセクターに戻したい、という趣旨だった。

ウォーレンは、翌日の3月9日にSXSWで登壇し、多くはエンジニアやプログラマ、ギークからなるオーディエンスを前にして、このアイデアについて話をした。

SXSWに登壇するウォーレン〔PHOTO〕gettyimages

テーマの過激さも相まって、大統領候補の登壇者の中ではぶっちぎりで会場を満席にしていた。その席上で、新たにAppleも分割対象企業に加えられ、これでBig 4のすべてが含まれることになった。

このテックポリシーは、大統領選におけるウォーレンの公約の一つであり、ということは、おそらくはこの2019年6月から始まる民主党予備選ディベートでも論点の一つとなっていくことだろう。

つまり、ウォーレンの問題提起によって、シリコンバレーをどうするか、イノベーションをどうするか、という問いが、アメリカ社会の今後を占うための具体的課題として、予備選を通じた議題の一つになっていくものと思われる。

それは、遅ればせながら、ようやくアメリカが「これからの情報社会をどう構想するのか?」という問いに正面から取り組んでいくことを示唆している。

そこでこの内容を少し詳しく見ていこう。

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Big 4の経済行動を政府が制御する

基本的に今回のウォーレンの提案の主旨は、Big 4の業容拡大に歯止めをかけ、ITの世界で今後も「フェアな競争」が維持されるように、反トラスト法のような公正なルールに基づき、適正に彼らの経済行動を政府が制御し、市場競争に任せた結果生じた歪みを矯正することにある。

前職がハーバード・ロースクール教授であったウォーレンらしい公約だ。

 

彼女の施策は、大きく2つのパートからなっている。

一つは、法に反したり、市場の競争を滅殺したりする可能性のあるテクノロジー企業のM&Aを阻止するために、専任の規制担当官を任命すること。

もう一つは、様々なサービスが可能になる土台となる事業――日常的に「プラットフォーム」と呼ばれるような基盤性の高い事業――を“Platform Utilities”と定義し、このプラットフォーム事業が第三者の利用において「公正」な事業体として振る舞えるようにするため、経営的にも資本的にも他の事業から切り離すことを法律で定めることだ。

第1の施策で想定されているのは、典型的には、潜在的な競合企業をスタートアップの段階で買収することで、たとえばFacebookでは、同系統のソーシャルメディア・サービスであるInstagramとWhatsAppの買収であり、Amazonの場合は、グローサリーストアのWhole Foodsの買収である。Googleでは、Waze(GPSナビ)やNest(ホームセキュリティ)、DoubleClick(ウェブ広告)などの事業が挙げられている。

いずれも、今ではプラットフォームを本質とするBig4傘下の事業であり、当のプラットフォームを第三者として利用する企業の事業内容としばしばバッティングする。そのため第三者のビジネスの成長を阻害する可能性を有する。

このように第三者企業の経済活動に隠然と制約を与えることができる事業は、反トラスト法の法理は「エッセンシャル・ファシリティーズ」と呼ばれ、第三者企業の生殺与奪を握る点で「権力」の源泉とみなされる。

第三者企業がビジネスを進めていくために、プラットフォーム事業者のもつ「エッセンシャル・ファシリティーズ」を利用しないことには、そもそも自分たちが求める市場=利用者集団にアクセスできないからだ。