アポ電強殺犯を逮捕した「 警視庁SSBC部隊」頭脳捜査の実力

膨大な監視カメラとデータベースの威力
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ETCカードで持ち主判明

車は10分ほどで「木場」のインターチェンジから、首都高速に乗った。高速道路には、自動ナンバー読み取り装置、通称「Nシステム」がある。この映像を確認することで運転者の顔、および正確な車のナンバーを捕捉できる。

「容疑者らは、現場近くの防犯カメラと、逃走中の別のカメラの映像とでは服装が変わっていました。おそらく捜査の攪乱のために、事前に犯行後の着替えを用意していたのでしょう」(前出・記者)

これまでは逃走中に服装を変える、帽子やメガネを装着して逃走することが追跡を遅らせるのに役立ったかもしれない。しかし、この防犯カメラを追っていく捜査手法の前では、まったく無意味なのである。

さらに、SSBCは犯行車両が高速で使用した「ETCカード」も調べている。高速道路の管理会社に捜査関係事項照会をかけ、犯行車両が使用したカードの情報を入手した。これで、カードの名義人の名前、銀行口座なども判明した。

車両は高速を降り、第一京浜道路を通って神奈川県内に入った。現場から逃走してから1時間後、車は川崎市川崎区にあるコンビニエンスストアに立ち寄った。

県境を越えて安心したのか、ここのカメラにはフードやマスクを外した素顔の3人の姿が映っている。

 

「警察は縦割り組織のため、都道府県をまたぐと、逃走できる可能性が高くなる」とは、これまでの犯罪者たちの常識だった。

小松園容疑者らも気が緩んだのだろうが、そんな常識はもはや通用しない。顔が映った映像を入手すると、捜査員らは、その映像を「DAIS」にかけた。

DAISとは「捜査支援用画像分析システム」の略称で、警視庁刑事部が開発した粗い画像を鮮明にすることができる独自のソフトウェアである。

このコンビニ近くで、小松園容疑者は降車。車両の追跡を続けると、残りの二人は第一京浜を北上し、長野県方面に向かったことがわかった。

「捜査員らが川崎のコンビニで聞き込みをした結果、小松園容疑者の自宅がすぐ近くにあり、朝晩2回はその店を訪れていることを探りあてた。そこで、このコンビニに警視庁独自の防犯カメラを設置し、小松園容疑者の行動確認を始めたのです。

残りの二人は長野県出身で学生時代からの同級生だった。こちらも行動確認を行っています」(前出・記者)

コンビニに設置した警視庁の防犯カメラは、一見すると15㎝ほどの四角い黒い箱だ。遠隔操作で向きを動かしたり、ズームをすることも可能で、24時間態勢で警視庁本部で監視している。

刑事による張り込みは、もはや防犯カメラが設置できない場所や、動く容疑者を追うなどといった補完業務でしかない。

犯行前の足取りである「前足」についても追跡した。結果、犯行前日に長野県を出発した車が、同じコンビニで小松園容疑者をピックアップし、現場に向かったことや、2月中旬には、3人が現場マンションの下見を行っていたことも判明した。

3人の行動を監視し、証拠を固めたところで、小松園容疑者を自宅付近で、残りの二人を神奈川県内の別の場所で確保した。3月13日のことだ。

「アポ電強盗」は昨年11月頃から出始めた手法だという。振り込め詐欺を行っていたグループが、世間に手口が周知され、成功率が大幅に下がったことで、よりシンプルかつ確実に現金を入手する手法に切り替えた。

実行グループとアポ電をかけるグループは基本的に分断されており、アポ電をかけるメンバーは、高齢者の名前が載った名簿の電話番号に、「銀行員」「親族」など複数の設定の台本を見ながら、一日数百件の電話をかけ続けているのである。

「アポ」が取れると、実行犯たちが現場に向かう手はずになっている。

現在、全国には約400万台の防犯カメラがあると言われる。今回のように、犯罪の早期解決、抑止に多大な効果があるのは間違いない。

しかし、裏を返せば、自分自身も常に見られているということだ。うっかり歩きタバコをした、つい立ち小便をした。それらはすべて把握されていると考えておいたほうがいい。

発売中の週刊現代では、このほかにも防犯カメラ捜査の課題にもふれ、特集で掲載している。

「週刊現代」2019年4月6日号より

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