# 移民問題

24歳のブータン人が自殺…「移民クライシス」で日本が自壊する日

無責任国家で進む“人身売買”の末路
出井 康博 プロフィール

政府の「本音」と「建て前」

しかし政府は、新たな政策が移民の受け入れにつながるとはけっして認めない。国民に根強い「移民アレルギー」に配慮してのことだ。

政府による本音と建て前の使い分けは、今に始まったことではない。外国人の受け入れをめぐって、過去に何度も繰り返されてきた。たとえば、新聞やテレビなどでも批判の多い「外国人技能実習制度」(実習制度)がそうだ。

実習制度を使い、18年6月時点で28万5776人の外国人が働いている。その趣旨は「途上国の若者に日本で進んだ技能を身につけてもらい、母国に戻って活かしてもらう」というものだ。

だが、それは文字通り建て前にすぎず、実際には日本人の働き手が不足する仕事に低賃金の外国人労働者を供給する手段となっている。仕事は単純労働でしかなく、母国で活かせる技能も身につかないのが実態だ。

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絶望の外国人留学生

さらにひどいのが留学生だ。留学生は32万4245人と、安倍晋三政権(第2次)が誕生した2012年末からの6年半で14万人以上も増えた。

急増した留学生の大半は出稼ぎを目的に、貧しいアジアの新興国から来日している。留学生には「週28時間以内」のアルバイトが認められる。そこに目をつけ、「留学」を出稼ぎに利用するのだ。そんな実態を政府も黙認し続けている。

実習生と留学生は、本来の意味で「労働者」とは呼べない。そんな実習生と留学生が、外国人労働者全体の4割以上に上る現実が、政府の建て前と本音、そして噓と欺瞞を象徴している。

 

移民政策クライシス

「移民政策は取らない」

安倍首相は繰り返しそう述べる。確かに、日本に「移民政策」など存在しない。政策すらないままに、「なし崩し」ともいえるやり方で、移民への門戸が広がっているのである。

外国人労働者や移民の受け入れが進めば、国のかたちは一変する。欧米先進諸国では、移民受け入れに対する厳しい世論が急速に台頭しつつある。その流れに逆行し、日本は受け入れを増やそうとしている。

政府の噓や欺瞞には国民も気づいている。気づいていながら傍観するだけだ。政府の発表、新聞やテレビの報道を見て、「人手不足なのだから仕方ない」と自らを納得させてはいないだろうか。

しかし、人手不足の正体とは何なのだろうか。どんな職種で、いくら人が足りないのか。それは本当に外国人に頼るべき仕事なのか。そして日本で彼らに、いかなる役割を担ってもらうのか──。

そうした問題への分析や議論もなく、また政策や戦略も持たず、日本は「移民国家」への道を歩んでいる。そんな現状に、私は強い危惧を覚える。何も外国人の受け入れを頭ごなしに否定しているわけではない。だが、彼らの受け入れ現場で起きている実態は、まさにクライシスとしか言いようのないものである。