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# 移民問題

24歳のブータン人が自殺…「移民クライシス」で日本が自壊する日

無責任国家で進む“人身売買”の末路

福岡で命を絶った24歳ブータン人青年の悲劇

2018年12月、日本語学校に在籍していた24歳のブータン人の青年が、留学先の福岡市で自ら命を絶った。自国の政府とブローカーに騙され、日本へと留学生として「売られた」末の悲劇である。

私は同年3月からブータン人留学生たちの取材を進めていた。最近になって留学生たちが日本で直面する問題について一部メディアが報道し始めてはいるが、彼らに対する国家ぐるみの「構造的暴力」は明らかになってはいない。そんな中、事件は、まさに私が新著『移民クライシス』を執筆するための取材を終えようとする時に起こった。

 

ブータンは「幸せの国」として知られるが、若者の失業が社会問題となっている。そこでブータン政府は失業対策として、日本へ若者を送り出す政策を始めた。ブローカーと結託し、「日本に留学すれば稼げる。日本語学校の卒業後は就職や進学も簡単にできる」と欺いてのことだ。

その言葉を信じ、人口わずか80万の国から1年間で700人以上のブータン人留学生が来日した。

日本円で110万円以上もの留学費用は、ブータン政府系の銀行が貸しつけた。日本政府は本来、留学費用を借金に頼るような外国人に対し、「留学ビザ」の発給を認めていない。しかし、留学生を人手不足対策に利用したい思惑から、ブータン人に限らずビザを発給し続けている。「留学生」という建て前のもと、低賃金で利用できる労働者として「買い取って」いるわけだ。

ブータン人留学生たちは来日後、日本語学校やブータンのブローカーと連携する日本人のアルバイト斡旋業者などから、様々なかたちで食い物にされた。

徹夜のアルバイトに追われ日本語の勉強は進まない。就職や進学に十分な日本語も身につかず、とはいえ借金を抱えたままブータンには戻れない。そんな悲惨な状況に追い込まれた揚げ句、青年は亡くなったのだ。

私は、異国の地で無念の死を遂げたブータン人の青年を弔うためにも、この国家的欺瞞、いや、国家的犯罪の実態を明らかにしなければならないと決意を新たにした。

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2019年は外国人増大「元年」

「平成」の元号が変わる2019年──。この年は、日本という国のかたちが変わり始めた「元年」としても後世に記憶されるかもしれない。日本が「移民国家」に向けて大きな一歩を踏み出すからだ。

19年4月から、外国人が「単純労働」を目的に入国できるようになる。「特定技能」という新しい在留資格がつくられてのことだ。この資格による就労期間は最長5年だが、一定の条件を満たした外国人は日本で引き続き働け、永住への道も開かれる。

「単純労働」とは、専門的な技能を必要としない肉体労働を指す。その単純労働で人手不足が深刻化している。身体を酷使する仕事なのに賃金が安いため、日本人の働き手は嫌がる。そこで政府は外国人の受け入れに踏み切った。

資格には「特定技能」というもっともらしい名前がついているが、日本語に不自由な外国人でも体力さえあれば仕事はこなせる。

進む日本の「移民国家化」

同じく4月以降、日本の大学を卒業した留学生の就職条件も緩和される。政府は「優秀な外国人材」の確保が目的だと強弁するが、実際には新在留資格の創設と同様、単純労働の人手不足対策となる可能性が高い。留学生が就労ビザを取得する際の基準は、すでに大きく緩んでいる。日本で就職した後、本来は認められない単純労働に従事している元留学生も少なくない。

留学生は、いったん就職すれば日本で永住する権利を得るに等しい。留学生の就職条件緩和は、新在留資格創設にも増して日本の「移民国家」化に直結する。

日本で働く外国人は、2018年10月時点で146万463人に達し、6年連続で過去最高を更新している。5年前と比べて約2倍の急増だ。実質的に「移民」と呼べる永住者も増加が続く。18年6月時点で75万9139人を数え、10年前から27万人近く増えた。今後は外国人労働者のみならず、「移民」の増加にも拍車がかかるだろう。